Inter BEE 2022 幕張メッセ:11月16日(水)~18日(金) オンライン:12月23日(金)まで

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Special 2025.10.20 UP

【INTER BEE MEDIA Biz】企画セッション「DAZNジャパントップに聞く、推し活スポーツ配信」事前レポート

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左から、笹本氏、平野氏、長谷川氏

来年のWBCがNetflixによる独占配信となることが発表され、大きな話題を呼んだ。スポーツのライブ視聴は今、放送から配信へのシフトが世界的潮流になっている。それは単純に経路が変わるだけでなく、スポーツ視聴の楽しみ方が変わることでもあるようだ。このセッションでは、スポーツ専門の配信サービスDAZN JapanのCEO兼アジア事業開発である笹本裕氏をお招きし、これからのスポーツライブ配信の進化をお聞きする。さらに日経Gaming編集長の平野亜矢氏もパネリストに迎え、eSportの最前線を追って来た視点から議論の幅を広げてもらう。モデレーターは、この企画を仕掛けたコンテンツビジネス・ジャーナリスト長谷川朋子氏が務める。その事前打ち合わせの様子をレポートしよう。話は様々に錯綜し、この分野の可能性の広さが感じられた。
(メディアコンサルタント 境 治)

テクノロジーの進化で、スポーツ視聴体験は今、大きな転換点を迎えている

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DAZN Japanの笹本氏はスポーツ視聴の未来について前のめりに話を始めた。「2025年はスポーツ視聴体験のあり方が大きく変わる転換点だと思います」従来のスポーツ配信は試合会場にカメラを入れて実況をつけ、リアルタイムに配信するスタイルだった。しかし今後は最新テクノロジーによって、スポーツの視聴体験が大きく変わると熱く語る。
「今年の6月に開催したFIFAクラブワールドカップでメタと組み、メタクエストでライブ配信を実施しました」従来のARやVR技術は過去映像や加工済み素材で使われていたが、今回はライブでの活用にトライした。この配信では視聴者があたかも観客席にいるような体験だけでなく、「ピッチに立って選手を迎え入れる」「選手がリアルに動くゲーム的な映像を見る」などの多様な視点が提供され、さらにデータを重ねた表示も可能だったという。

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日経Gamingの平野亜矢氏は笹本氏の発言を受け、ゲームを通じて「ユーザーサイドもスポーツをデータで見ることに慣れ始めている」と指摘。スポーツ視聴が配信にシフトすることとゲームには関係性があると解説してくれた。「今の若い人たちは、野球にWBCから入り次に触れるのがゲーム」と平野氏。ゲームでは選手データがカード形式で明示され、実際の選手を理解するのに役立つという。「ゲームでも、その年に活躍した選手が次の年のカードに反映される」と、ゲームでもリアルでも、スポーツ体験でのデータへの需要が高まっている点を強調した。
考えてみればスポーツをネットを通して楽しむという点では、ライブ配信もeSportsも同じだ。データが多様に見せることができるだけでなく、ARやVRを活用した見せ方も今後、それぞれ急激に進化しそうだ。そこには相乗効果も期待できるだろう。笹本氏と平野氏に議論してもらう意義深さを感じた。

スポーツファンのライト層を沼に沈める「推し活」

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笹本氏は今後のDAZNの方向性として「視聴体験」「応援する体験」「参加する体験」という3つの体験改革を掲げた。「『推し活』やゲーム的な参加といった新しいカルチャーを、社員たちにも吸収してもらいたいのです」と力説する笹本氏は、スポーツの楽しみ方の「推し活」化が進んでいるとかねてより主張している。
その流れで議論は「ライト層」の取り込みについても及んだ。モデレーターの長谷川氏は「熱心なファンにとってスポーツ視聴がどんどん面白くなっていく一方で、そこまで深くはまらない層をどう広げていくか」と問いを投げかけた。これに対し平野氏は「ゲーム経験が新たなスポーツへの入り口になっているようだ」と述べ、さらに近年のスポーツ観戦における「推し活」文化の広がりにも言及。「かつての野球応援では見られなかったが、今では特定の選手の名前が入ったユニフォームを着るのが当たり前になった。これはサッカー観戦の文化から来たもののようだ」と分析し、ライト層がより深く競技や選手にはまる「沼に沈める」きっかけとして、「推し活」が機能している実態を語った。
打ち合わせを通じて、今後のスポーツ配信が単なる中継を超え、視聴体験の変革を巻き起こし新たな市場を開拓する可能性を感じた。
当日のセッションでは、さらに深掘りした議論が展開されそうだ。スポーツビジネスや配信技術の未来に関心のある方は、ぜひ参加を検討されたい。申し込みはInterBEEへの来場者登録を済ませた上で、下のリンクの聴講予約からどうぞ。

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