Industry Curation
2026.09.08 UP
【Inter BEE CURATION】メディアの信頼性は何で決まるのか -”慣れ親しみ”が信頼性を高める可能性を探る-
※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。
VR Digest編集部 VRダイジェスト+
※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。
選挙におけるネットメディアの浸透、AI技術の発展によるフェイクニュースに代表される不確かな情報の増加などを背景に、この数年、改めて「メディアの信頼性」が議論されてきています。メディア業界のイベントでは信頼性をテーマとしたディスカッションが行われ、筆者もお客様とメディアの信頼性について議論する機会が増えてきました。
メディアにおける「信頼性」については、まず「公平・中立性」や「企業の健全性」が思い浮かびます。特にマスメディアの報道・ジャーナリズムが持つ役割の文脈において、「公平・中立性」や「企業の健全性」は重要な要素です。
また別の視点から、林(2017)※は、メディアへの信頼が議論のテーマになっている背景として、"マスメディアの存在が「慣れ親しみ」の状態から離れてしまった"ことを指摘しています。この指摘は、メディアへの「慣れ親しみ」が信頼性と関係している可能性を示唆するものとも解釈できます。このことから、メディアへの「慣れ親しみ」が、そのメディアの「信頼性」を高めるという仮説を立てることができます。
メディアの信頼性がこれまで以上に問われる今、生活者がどのような要因によってメディアを信頼するのかを解き明かすことができれば、メディアが信頼性を獲得・向上させるための施策の検討や立案に役立てることができます。そこでひと研究所では、メディアの信頼性に影響を与える評価要因とその構造について調査を行いました。本記事では、その分析結果をご紹介します。
※参考文献
林 香里(2017)『メディア不信―何が問われているのか』岩波書店
ひと研究所では、メディアの信頼性に影響を与える要因を分析するための調査を実施しました。対象としたメディアは、テレビ(NHK、民放テレビ局)をはじめ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアや、YouTubeやXなどのネットサービス、さらにはChatGPTなどの「対話型AI」といった20のメディアです(詳細は本稿末に記載)。
調査内容は、それぞれのメディアの利用者に対して、下記の内容を質問しました。
◇ 信頼性:「信頼できる」と感じるか
◇ 慣れ親しみ:「慣れ親しみがある」と感じるか
◇ 情報充実性:「情報が充実している」と感じるか
◇ 興味関心合致性:「自分の興味・関心に合っている」と感じるか
◇ 公平・中立性:「公平・中立」と感じるか
◇ 企業健全性:「運営している企業・団体が健全である」と感じるか
◇ 共通話題性:「みんなの共通の話題がわかる」と感じるか
※いずれもメディアごとに7段階で回答。
メディア全体における信頼性評価への影響要因を分析するために、今回は20のメディアごとの回答データをすべて合わせ、延べ28,198の回答データを分析しています。
メディアの信頼性評価への影響度合いを明らかにするために、目的変数を「信頼性」、説明変数を性別、年齢、メディア評価とした重回帰分析を行いました(図表1)。「標準偏回帰係数」とは、説明変数それぞれが目的変数に与える影響度を表しています。この結果を解釈すると下記のようになります。
◇ 性別:男性と比べて女性の方が、信頼性評価が下がる。
◇ 年齢:年齢が高いほど、信頼性評価が上がる。
◇ 慣れ親しみ:「慣れ親しみがある」と感じているほど、信頼性評価が上がる。
◇ 情報充実性:「情報が充実している」と感じているほど、信頼性評価が上がる。
◇ 興味関心合致性:「自分の興味・関心に合っている」と感じるかどうかは影響しない。
◇ 公平・中立性:「公平・中立」と感じているほど、信頼性評価が上がる。
◇ 企業健全性:「運営している企業・団体が健全である」と感じているほど、信頼性評価が上がる。
◇ 共通話題性:「みんなの共通の話題がわかる」と感じているほど、信頼性評価が下がる。
また、係数の絶対値は影響力の大きさを指しますので、この中で特に影響力が大きいものは、係数の大きい順に「公平・中立性」「企業健全性」「情報充実性」「慣れ親しみ」となっています。この4つの変数については、20メディア個別の回帰分析を見ても(本稿では掲載を割愛)、すべてで統計的に有意な影響力が確認できました。冒頭で触れた"メディアへの「慣れ親しみ」が、そのメディアの「信頼性」を高める"という仮説についても、調査データの分析から支持された結果となります。
このように、メディアが「信頼性」を獲得し、さらに高めていくためには、「公平・中立性」「企業健全性」はもちろん、"情報が充実しているか"、そして、"慣れ親しみのあるメディアであるか"という要素も考慮する必要があることが、今回の分析から示唆されました。特に「慣れ親しみ」は、普段からのメディアと生活者との関係性に大きく影響されると考えられることから、信頼性向上に向けた施策を検討する余地は大きいといえます。
ひと研究所では今後も「メディアの信頼性」に注目し、調査研究を進めていきます。
【ひと研究所 メディア信頼性調査 調査概要】
調査日 :2026年3月5日(木)~3月8日(日)
調査手法 :Web調査
調査エリア :全国
サンプルサイズ :3,578ss
対象者属性 :男女15~69歳
調査対象メディア:20メディア(下記参照)
1. テレビ(NHK)
2. テレビ(民放テレビ局)
3. TVer
4. ABEMA
5. ラジオ(NHK・民放ラジオ局)
6. radiko、NHKラジオ らじる★らじる
7. 新聞(紙、デジタル版)
8. 雑誌・週刊誌(紙、デジタル版)
9. YouTube
10. TikTok
11. X(旧Twitter)
12. Instagram
13. Facebook
14. LINE
15. ポータルサイト(Yahoo! Japanなど)
16. まとめサイト、ブログなどの記事
17. ニュースアプリ
18. ポッドキャスト
19. 対話型AI(ChatGPT、Geminiなど)
20. 屋外広告・交通広告