InterBEE REVIEW2016
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92「配信プラットフォームのオリジナルコンテンツ戦略」クオリティの高い制作者にとって良い環境に向かっている?11月18日(金)13:00-14:30 動画配信プラットフォームでのオリジナルコンテンツ制作について、プラットフォーム側と制作者側それぞれの立場によるディスカッションだ。ITジャーナリストの西田 宗千佳氏をモデレーターに、プラットフォーム側としてエイベックスデジタルでdTVなどを担当する村本 理恵子氏、huluのコンテンツをディレクションするHJホールディングス・長澤 一史氏、制作者側としてポリゴン・ピクチュアズの代表取締役・塩田 周三氏、共同テレビジョンの関 卓也氏が登壇。なかなか一度に揃わないメンバーにより非常に興味深い議論が展開された。 モデレーターの西田氏からオリジナルコンテンツの意義について市場が活性化してプレイヤーが増えるほど差別化が必要になる。映像配信サービスでは最初、数を競い合うが、それに加えて「オリジナルコンテンツ」が必要になってくると説明。 長澤氏は昨年huluで配信して賞も獲得した「フジコ」などオリジナルコンテンツに取り組んできた。長澤氏の整理ではhuluのオリジナルコンテンツには「1.日本テレビ及びネット局との連動を前提としたもの。2.新作劇場映画とのコラボレーションによるもの。3.既存メディアでは制作しえなかったような作品」の3つの方向があるそうだ。 村本氏はdTVで2009年から様々なタイプのオリジナル制作を続けてきた。映画とのタイアップでスピンオフ作品を配信したり、逆に配信した作品を劇場で公開するなど様々な展開方法にも取り組んだ。一方で、コンサートのライブ配信も実現。今年はVR映像の配信も試みており、音楽映像のライブ感覚醸成に活かしている。 塩田氏は、CGアニメの日本での草分けのような存在であるポリゴン・ピクチュアズが、アメリカ市場での制作を主軸としてきたことからNetixと接触を持ち、日本市場でもセルアニメルックのCGアニメ制作が技術的にできるようになったため新しい作品制作に乗り出し、その配信権でNetixとの本格的なつきあいがはじまった。 関氏は共同テレビジョンによる配信向けオリジナルコンテンツ制作についてプレゼンした。フジメディアグループの同社だが、ここ数年で急激に配信向けオリジナルコンテンツの実績が増えた。リストをスライドで見ると、その数の多さ、幅の広さに驚かされた。 今後もしばらく試行錯誤が必要そうだが議論のトーンは明るく、一緒に未来を模索しようという前向きなディスカッションだった。11月18日(金)11:40-12:30 SNSの発達で、従来のメディアの「作り手」と「受け手」の関係が崩壊し、新しい関係性が構築されつつある。その中で動画配信もユーザー自信ができるサービスが次々に誕生し、注目されている。ここではユーザー発信ができるライブ配信のサービス事業者として、LINE の佐々木 大輔氏、Twitterの三澤 一裕氏、Facebook の綾尾康嗣氏をパネリストに迎え、スマートニュースの松浦 茂樹氏のモデレーションでディスカッションが行われた。 LINEの佐々木氏は、昨年12月にスタートしたLINE LIVEについて説明。ユーザー自身が配信できるようになったのは8月からだが、すでに多くのユーザーが利用しているという。女性の比率が57%と高く、24才以下が47%と圧倒的にユーザー層が若い。一般ユーザーの配信は、ほとんどタテ型で画面を使っているそうだ。 三澤氏はまずTwitterのユーザー推移を説明。2016年9月の月間ユーザー数は4,000万人で直近でも非常に増えているそうだ。そんな中、2015年3月にライブ配信アプリPeriscopeを買収。Twitterのタイムラインでライブ配信が直接出てくるようになった。各メディアにも使ってもらえるよう支援しているという。 綾尾氏はFacebookの概要を説明。月間ユーザー数は全世界で17.9億人、日本でも2400万人いるという。Facebook Liveは急激にユーザー数を伸ばし、長時間視聴される傾向だそうだ。企業の利用も多いが、圧倒的にユーザー自身の映像配信が多い。 主題はユーザーによる映像配信だが、最初に企業などによる公式配信についての現状が語られた。TwitterのPeriscopeは京都国際映画祭で使われて7万人に視聴され、海外からの視聴もかなり多かったそうだ。Facebook Liveはジャーナリストが現場から配信する事例がかなりある。5月には「投稿ツール」が導入され、カメラのラインから配信できるようになった。LINE LIVEはLINEに公式アカウントを持つ企業や団体が盛んに配信をした。サントリーはモルツ球団の試合を配信し、300万人が視聴したという。映画界にもアピールし、『君の名は。』では新海監督がヒットのお礼を配信し、ファンとの交流ができたそうだ。 ライブ配信は2016年のメディア状況の中でもっともホットなテーマのひとつだった。まだまだそれぞれ試行錯誤の段階だが、その進歩はユーザー自身が切り開く要素も大きいだろう。先がわからない分、ワクワクさせてくれる領域ではないだろうか。「ユーザー主役のライブストリーミング」最新動向が明らかに。注目のライブ配信を担う事業者によるディスカッション。

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