InterBEE REVIEW2016
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「多チャンネル放送事業者の新展開」変革期を迎えた多チャンネル放送の、新しいあり方を模索する試案を議論9111月18日(金)10:30-11:20 CSやCATVでチャンネルを展開する事業者の現状とこれからに向けての試みをディスカッションした。パネリストとしてFOXネットワークの石澤 潤氏、キッズステーションの木村 貴行氏、ソニー・ピクチャーズでアニマックスやAXNを担当する藤井 尚史氏が登壇。江口靖二事務所の江口 靖二氏がモデレーターを務めた。 まず江口氏がこのセッションの趣旨を説明。多チャンネル放送が始まった時以来の変革期を迎え、新しい有料多チャンネル放送のあり方を考える取組みをIPDCフォーラムの枠組みの中で行ってきており、このセッションではそこで出てきたアイデアを披露してもらうと述べた。ただし、ここでの見解はあくまでパネリスト個人のものであり、それぞれの所属企業の意見ではない旨も添えられた。 石澤氏は、エンターテイメント業界は決して悲観的状況ではなく、スクリーンが増える一方であることを考えればむしろチャンスがふくらんでいると思う、と話をはじめた。それを受けて藤井氏が提示したのが、キュレーションTVという概念だ。多チャンネル放送が送り出す莫大な量のコンテンツ。その編成を“モジュール化“し、お客さんの嗜好や属性に合わせておすすめの構成に変えていく。単独の放送より、もっと“見たい”編成を提案するまさにチャンネルを“キュレーション”する考え方だ。 次に木村氏がもうひとつのアイデアを説明した。放送事業が仮に縮小傾向にあるとしても、その時々にメインとなる業種と連携することで、放送の役割を見出すことができるのではないか。そこで、「TVコードプラットフォーム」を構想。放送事業者として、番組を見たと証明するコードを発行する。例えばいま盛んであるゲーム事業者と連携し、番組を見た人にゲームで使えるアイテムなどを発行するといったやり方があるのではないか。その仕組みを通じて、チャンネル契約者を増やすことも可能かもしれない。「ローカルからテレビの未来を考える」キングコング西野氏が唱える新たなファンとの関係づくり?!11月17日(木)16:10-17:00 NHK文研の村上 圭子氏がモデレーター役となり、毎日放送所属でマルチスクリーン型放送研究会(通称マル研)の中心人物・齊藤 浩史氏、東京MXテレビで放送同時配信の実験に関わる茅根 由希子氏、讀売テレビ所属で局横断の「テレビの未来を考える会」を運営する西田 二郎氏というメンバーに、なぜかお笑いコンビ・キングコングの西野 亮廣氏が加わって、不思議なディスカッションが展開された。 今回、西田 二郎氏と西野 亮廣氏はこのイベント用にLINE LIVEで映像をライブ配信していた。冒頭、村上氏から齊藤氏と茅根氏が紹介され、齊藤氏はマル研のこと、茅根氏はエムキャスアプリを通じた放送同時配信のことを簡単にプレゼンテーションした。続いて会場を撮影していた西田氏と西野氏が登壇し着席。彼らが行っているLINE LIVEの映像がスクリーンにも投影され、不思議な絵面のディスカッションとなった。 西田氏は自身が中心になって結成した「テレビの未来を考える会」と西野氏の関係を話した。西野氏が何の気なしにはじめた「パイン飴プロジェクト」を、各ローカル局のディレクターが参加している「考える会」を通じて広めていった様子を紹介。もはや局の枠組みを超えて連携しあうべき時ではないかと投げかけた。 村上氏からはローカル局の自社制作比率を示した図について解説。ある在阪局の自社制作は全放送時間10,000分あたりで見るとネット枠で300分、ローカル枠で2,500分で、もっと小さい局だとさらにぐっと少なくなっている。そんな中、10月に朝日新聞で報じられた「テレビのネット同時配信」のような話題が出てくると、ローカル局の危機感は増している。これを受けて、齊藤氏はマル研の新たな取組みを説明。スマートフォンの画面上部で放送同時配信された番組を見ながら、画面下部ではテレビ局側から付随的に様々な情報や広告を送り出す仕組みを開発中だという。 こうした事例を見たあとで、西野氏に「ローカル局への提言」を聞いた。西野氏はクラウドファンディングでの絵本制作の体験から、何千人ものファンが集まればきっと元はとれるはず。放送も、買い手に最初から参加してもらうとよいのでは、と提言した。 西野氏の提言に応える形で、茅根氏も発言。エムキャスは同時配信だけでなく独自にライブ配信で番組を全国に送信できる。西野氏にもやってもらえないかと持ちかけたところ、西野氏も「テレビづくりをゼロから一緒にやりたい」という意志を示した。 LINE LIVEの想定外の要素も含め、非常に刺激的で面白い発言も飛び出すセッションとなった。こうしたシナリオを超えた感覚にこそ、ローカル局の今後のヒントが潜んでいるのではないだろうか。

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