InterBEE REVIEW2016
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81■災害時それぞれのメディアがどのような 役割を担うのか? NHKの柴田 健剛氏は、全国放送を基本に位置づけ、最近は公共メディアを標榜し、L字放送やデータ放送、ラジオ、ネットラジオ、ホームページ、アプリなど、あらゆる媒体を使ってNHKが取材した情報を速やかに伝えることを目標としている。 テレビ熊本の有住 宣彦氏は、先ず、日本中・世界中から熊本にご支援をいただいたことへお礼を述べた。今回、地元ローカル局として我々に何が出来るかということを皆で一生懸命考えた中で、全国に発信するニュースは応援に来ていただいた系列局さんにお任せをして、地元の被災者に寄り添ったニュースを届けることに決めた。 TBSラジオの三条 毅史氏は、ラジオは、避難所、停電時、高齢の方、目が不自由な方など、被災者にとって「最後の砦」になる可能性があることを考えている。また、AM局の番組がFMでも聞けるワイドFMを全国的に整備し、民放ではradikoという手段もある。 下田有線テレビ放送の松本 邦久氏は、災害発生時に地域住民に密着したきめ細かな生活情報を提供することがケーブルテレビの大きな役目だと思う。過去の災害でも24時間体制で消防団の参集の呼びかけ、火災発生情報、河川情報などを流し一定の評価を受けてきた。 ヤフージャパンの畠 良氏は、スマホアプリやLアラートを使った情報を提供するほか、外国の方に翻訳したコンテンツを提供している。検索サービスで被災者がその時その時で必要としている情報が変わっていることに対し、どう情報提供できるかが課題。 LINEの江口 清貴氏は、LINEというサービスは東日本大震災を契機にして生まれた。親しい者同士をコミュニケーションさせることを目的に、自分の気持ちを簡単に相手に伝えるスタンプ、既読機能など、災害時に使えることを念頭に置いて作られたサービスが多い。■熊本地震での課題を今後にどう生かすか 「動物園からライオンが逃げ出した」など、SNSでの流言飛語は東日本大震災でも発生し、やはり熊本でも発生した。ネットリテラシー教育が必要だろう。発信者のプロフィールや前後のつぶやきなどから信憑性を判断もできる。デマを打ち消すためには、正しい情報を正規ルートで、デマより強い力でデリバリーすることが重要だろう。 Lアラートは活用されたか。課題は入力の人手不足で、災害発生時に市区町村をカバーする全国共通のルール化を要望している。自治体の方にLアラートの情報発信の効果に実感があれば入力を優先することにつながるが、それは我々メディアの役割。Lアラートの情報を上手く活用しそれ以外を取材する、Lアラートには期待している。 先が読める災害の場合は、事前に準備をすれば被害を最小限にできる。しかし突発的な災害は、日頃の訓練が必須。地震と水害といった複合災害の訓練も必要。対応人材が極端に少ない深夜帯を想定した訓練も必要だろう。自治体とメディアの協力訓練も検討すべきと思われ、またメディアの相互補完に関するドリルも必要だろう。■世界の全産業を飲み込むAIの波 最後に、今回、モデレータを務めた東京大学大学院の須藤 修教授は、これからの時代は、デジタルをクラウドやAIによって、どういうサービスにして提供するかが勝負。BBCもその中で放送・ネットの事業の統合で新たな戦略を考えていると思う。このInter BEEは放送事業が中心ですが、より大きな視野を持ってネットとブロードキャストシステムの融合を官民、放送事業者、学者も含めて考えていかないといけない。そして、その極めて重要なトピックスとして「災害」があるということをご認識いただきたいとして締めくくった。

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