InterBEE REVIEW2016
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 日本テレビ・太田 正仁氏は三年連続の登壇となった。毎年整理された戦略をわかりやすく説明してくれる太田氏は、見逃しサービスTADAや定額配信・huluの現状と考え方を披露した。huluは米国メディアから買収して以降も順調に会員数が伸び、今年3月の130万人からさらに大きく増えていること、スマートデバイスのユーザーが半数を占める一方で視聴時間ではテレビの利用が長いことがわかったことをプレゼン。また動画配信について大きなリニューアルを準備中であることも明かした。 TVerについてはテレビ東京コミュニケーションズの蜷川氏が再びマイクを握って説明。AbemaTVの勢いに隠れてしまっているが、アプリのダウンロード数は順調に伸びて400万を突破したことを報告した。25 後半は塚本氏のモデレーションによるディスカッション。SVODについての考え方や海外事業者への対抗策、配信とタイムシフト視聴率の関係など次々にテーマを投げかけて切り込んでいった。最後に、動画サービスの利用を比較したデータをスライドで見せ、TVerのMAUが伸び悩んでいることを示した。「とっておきの質問」と称して「TVerを今後どうするのか」と鋭く切り込んだが、各局とも微妙な反応。太田氏は「TVerだけでは難しい」と答えて共同で展開するサービスの困難さがにじんだ。 AbemaTVが登場した一方でLINEがライブ配信サービスをはじめたりC Channelのようなネット発の映像サービスが続々出てくる中で、テレビ局の優位性を動画配信でいかに活用するか、TVerのみならず今後問われていきそうだ。各局の進化と、この領域の難しさが同時に浮き彫りになったセッションだった。テレビの優位性をどう生かすか フジテレビ 野村 和生氏はFOD(フジテレビオンデマンド)がこの一年広げてきたサービス内容を説明。見逃し配信「フジテレビプラス7」の対象番組を14番組から24番組に大きく増やしたほか、広告出し分け機能を実装した。電子書籍事業を強化した一方でSVODにも本格参入し、オリジナル番組も投入するなどサービス内容の幅を大きく拡張した。最近はVRにも挑戦し、多様な楽しみ方ができる配信事業となっている。 続いてテレビ東京コミュニケーションズ 蜷川 新治郎氏が「テレ東っぽさ」を軸に配信事業を展開していることをプレゼンした。全方位外交型で置ける場所にはコンテンツをどんどん置いていきリーチの最大化を図っていること、「放送⇔プロモーション⇔マネタイズ」のエコシステム構築をめざしていることなどを説明した。 TBS 田澤 保之氏は、映像配信サービスを10月に大幅にリニューアルし、これまでの他社サービスに番組を提供して自社ではサービスを持たない「支店主義」から大きく方向転換した旨を説明した。見逃し配信のTBS FREEとは別に、プレミアム見放題のSVODサービスを立ち上げ、月額900円で同社の豊富なドラマアーカイブを視聴することができる。900円のうち都度課金に使える分が500円分あるので、結果的にはリーズナブル。利用者は非常な勢いで伸びているという。本店主義への転換というより、「全部本店主義」と田澤氏は解説した。 テレビ朝日 大場 洋士氏は、昨年のこの場で明確に戦略を示せなかったのはもろもろ潜航中だったと話を始めた。AbemaTVが準備中だったので言えなかった全体戦略をあらためて解説。地上波・BS・CSに加えてインターネット・メディアシティ(六本木ヒルズやEXシアターなどイベント会場)の5つのメディアを組み合わせていく「5メディア戦略」を掲げ、その中で動画配信をAVODからTVOD、SVODまで、他社との協業によって展開していることがプレゼンされた。各局が動画戦略の最新状況を報告

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