InterBEE REVIEW2016
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 落合氏は、このような作品を通じて、人間にとって映像と物質の間にある差は何かを研究しているという。そうした落合氏の視点では、4K、8Kの映像は、テレビ放送やコンテンツを視聴するためだけのものではない。「8Kになると、それは“窓”になる。部屋に8Kモニターがあれば、好きな風景を映すことで窓のない部屋でも快適に暮らせるだろう。そこに人物が映れば、リアルに会話をすることもできる」。集中しなくてもリアリティがある8K映像の登場により、コミュニケーションの形が変わっていくと指摘する。 午前のセッションで西村氏は、「コンテンツやメディアアートの“チカラ”を考え、テレビの未来像についても議論を深めて行きたい」と語ってセッションを始めた。 落合氏はメディアアーティストとして、様々な作品を作っている。セッションでは、最新の作品についての紹介があった。その中の1つは、「最近、会社を作って、新しいスピーカーの製品を作った。超指向性のスピーカーで、5cm×5cmといった狭い空間でしか音が聞こえない。このスピーカーを使って、廃校になった中学校に、学校の音が限られた範囲だけ聴こえる作品を作った。音だけは普段通りの学校なのに、空間は廃校という、幽霊感がキーワードだ」と落合氏は語る。 普通の場所、ありえない場所に、コンテキストを感じる仕掛けを組み込むアートというわけだ。この他にも、何もない空間にプラズマで3次元の映像を表示させたり、空間に感触を感じられたりするような作品も手がける。なく、安定的な雇用も生み出し、産業の発展に繋がる」という。 後半のパネルディスカッションで登壇した山田氏は、「MV監督がつくりだす世界をMVだけで消化する時代は終わり、音楽のために空間そのものを作っていく流れになっている。現実と非現実の境界線はどんどんなくなっている」と話す。 『ドラゴンクエスト』の30周年という節目の企画として、アリーナクラスの会場でVRを含めたイベントの演出を担当した依田氏は「日本の音楽系アーティストは、全国ツアーやドームツアーがある種のステータスになっていますが、こういった常設型の演出に凝ることで一つブレイクスルーがあると思います。ジャパンカルチャーを発信して、それをマネタイズすることは、新しい演出だけでは8K時代にはディスプレーが「窓」に変わる現代の魔法使いがメディアの未来を語る音楽のために空間を作る流れに19映像作家 映画監督山田 智和 氏日本テレビ放送網株式会社事業局 事業推進部 (兼) 社長室企画部依田 謙一 氏写真左からSENSORS.jp 副編集長モデレータ:市來 孝人 氏ParadeAll株式会社 代表取締役エンターテック・アクセラレーター鈴木 貴歩 氏

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