InterBEE REVIEW2012 (JP)
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09 Double Negativeが設立されたのは1998年。CGプロダクションが多く集まるロンドンのSOHO地区で、ポストプロダクションとして生まれた。中心となったのは、マシュー・ホーベン(CEO)と当時別のスタジオで働いていたアレックス・ホープ(MD)。彼らの目的は映画のVFXを手がけることで、最初に携わった仕事は、映画『ピッチブラック』だった。 以後順調に業績を伸ばしていったが、大きなターニングポイントは『ハリー・ポッター』だったという。ロンドンのVFX業界自体を活性化させ、それがDouble Negativeを大きく成長させることにもつながっていった。事実、2005年当時150人だったスタッフも、現在1000人を越える規模になっている。さらに2009年にはアジアに進出し、シンガポールにオフィスを構えた。Double NegativeのクリエイティブディレクターであるNathan McGuiness(元Asylum VFXのリーダー)に率いられたDouble Negative Singaporeは『ボーン・レガシー』『トータル・リコール』『レ・ミゼラブル』『Cuban Fury』のような大規模プロジェクトでロンドンオフィスとシームレスに協力している。 Double Negativeの躍進を支えたものは2つあるとゾウイー氏は言う。「1つはクオリティです。マッチムーブ、モデリング、テクスチャ、ライトなど、私たちはどれをとっても世界トップクラスです。これはアーティストの目……不十分なカットに気づいたら直す、という考え方に支えられています。リアルな映像だと感じてもらうには、例えば目の中の小さな点や、どのようにビルが爆発するかなど、細かい微妙なディテールに気を配ることが肝心なんです」 それがクオリティにつながり、ひいてはスタジオの評価になっていく。 また、テクニカルとR&Dに力を注いでおり、自社でソフトウェア開発を行っているのも強さの1つだ。MayaとRenderManを中心としたパイプラインを組んでいるが、ライティングとシェーディングのシステムは独自のもの。流体シミュレータも自社で開発している。「もう1つは、人材。才能、経験のあるアーティストは重要です。ですから、プロジェクト単位ではなく、長く会社で働いてほしいんです。実際、10年以上働いている人も少なくありません。もちろん未経験者も歓迎しています。キャリアプログラムを組むなど、才能を育てる場も設けているんです」 こうして、人と技術の両面をフォローすることで、他社にはまねのできない精緻な映像が生まれている。

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