InterBEE REVIEW2012 (JP)
16/48

20復原中の建物をスクリーンにする苦労 プロジェクションマッピングでは、スクリーンとなる建造物に合わせて映像を制作しなければならない。そのため、一番大事なのはまず、フォーマットを定めることなのだと森内氏は言う。 今回のプロジェクトでは、設計図を元にCGで作った東京駅舎をアタリに映像を制作しているが、1/200の模型を使って投影実験なども行っている。アニメーションの場合、画面で見ているものと立体に投影されたものでは印象などが大きく変わるためだ。模型で空間を把握しながら行わなければ良い映像にならない。 しかし、そこにもさまざまな問題があった。図面と実物の東京駅舎が明らかに違っていて苦労をしたという。「本来なら図面を基にするのではなく、建物の3Dスキャンをすべきです。けれど、駅舎自体、工事中だからそれができませんでした。結局、図面を元に映像を作り、最終的な書き出しのときに微調整しつつ、現場でも調整するという形を採りました」(諏澤氏) また色の調整にも苦労があった。駅舎は、黒い色の屋根、濃い赤のレンガ壁、レンガの目地の白、窓枠、窓にかかったカーテンの白、といった具合に黒、白、赤が入り乱れていた。「赤いレンガと白い目地のおかげで、縞々に見えてしまい、立体感を損ねてしまうんです。カラーコレクトの補正プログラムを組むためのチームも作りました」(森内氏)「具体的には色のマスクを作る作業です。赤の部分はより明るく、白の部分は暗くと。これらをAfterEectsで行っています」(諏澤氏) また、投影することで色が転ぶ問題や、CGのディテールが細かいと逆に不自然に見えてしまうなどの問題も本番2週間前に発覚。「4K近いサイズで29.97fpsのフレームレートで映像を作っていて、それが作り直しになるわけです。クリエイターの方が、興ざめして帰ってしまう、なんてこともありました」」(諏澤氏)どのような映像にすべきかプロジェクトの意義とは さまざまな苦難を乗り越えて準備されてきた、『TOKYO STATION VISON』。そこで表現される映像のほうにも、さまざまな思いが込められた。 当初森内氏は、日本の中心となるターミナル駅ということで、国鉄~JRの歴史を紐解くような映像……名列車や駅周辺の発達の様相などを構想していた。しかし、JR東日本と打ち合わせを重ねていく中で、「世代を越えて多くの人に注目されることになる」という話から、誰しもが楽しめるもの、プロジェクションマッピングとはどういうものかが分かるエンタテイメントを目指すこととした。 “利用する人によってさまざまな顔を

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です