InterBEE REVIEW2012 (JP)
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19未踏のプロジェクトに挑みたい。しかし、現場は工事中…… 東京駅の赤レンガ駅舎は、日本銀行本店をはじめ多くの建築物を手がけた、辰野金吾によって作られた建物。98年前に建てられた歴史ある建造物だが、戦中の空襲により一部が焼失するなどし、暫定的な修復をされたまま21世紀まで運用されてきた。 それが、JR東日本の進める駅再開発の一環で、駅舎を建造当時の姿に復原するプロジェクトが始められた。 長年の工事を終え、2012年の10月に開業することを知った森内氏は、JR東日本に対して、記念事業としてのプロジェクションマッピングイベントを提案した。2011年の4月のことだった。「歴史ある建物の復原ですから、これはもう千載一遇のチャンスです。駅舎の再生と発展のプロモーションとして、プロジェクションマッピングを行うことに面白さや可能性を感じたんです」 話は順調に進み、実行のタイミングは駅舎復原完成直後の9月終わりと決められた。というのも、10月になると開業を迎え、駅舎内に設けられた東京ステーションホテルの営業が始まるため。ホテルの窓に明かりが灯っていると、プロジェクションマップを行う際に不都合となるからだ。そのため完成直後・開業直前、というギリギリの時期になった。 ところがこのタイミングが問題の1つにもなった。完成直後にイベントを行うということは、準備は工事中に行わなければならない。プロジェクションマッピングと一口に言っても単にプロジェクタを置けばいいというわけではない。数十台にも及ぶプロジェクタをどこにどのように配置するか、映像として成立させるためには非常に細かい問題をクリアしなければならない。工事を行っている現場の中、プロジェクタを設置する場所を探したり、また実際に設置してテストを行ったり、観客から一番映像が美しく見える場所・ビューポイントの設定も探らなければならない。なにより建物自体が完成していないので、ぎりぎりまで細かい絞り込みができなかった。「テストを7月の雨の中、行いました。駅舎は濃い色のレンガということもあり、投影する映像には照度がかなり必要だというのが分かりました。35000ルーメンのプロジェクタを使ったんですが、正直、好ましい結果ではなくて、やっていいのかな、と思いました」とテクニカルの内田氏。 投影面に100ルクスの照度は作りたいが、そのためには、台数を重ねて投影する必要があった。また、構内のスペース的な都合もあり、プロジェクタの場所は投影面から77mの地点に置かなければならなかったため、その照度を得るために何台重ねればいいのか、また駅舎全体をカバーするために何台プロジェクタが要るのかなどを計算しなければならない。 16:9で投影できる機材の数、4:3の機材の数、現実的に用意できるプロジェクタの数など物理的にクリアしなければいけない課題も山積した。 結局、上下2段の10分割で投影し、20000ルーメンのプロジェクタを46台用意するなどして、ようやくベースが固まった。

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