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展示会レポート

Inter BEE 2009

  • 開催地:日本(幕張メッセ)
  • 2009年11月18日(水)~20日(金)

2009.12.25

私が見たInter BEE 2009技術動向(その4、編集・制作系、符号化技術、各種イベント関係)

ワークフローを大きく変えるノンリニア編集システム(三友)
番組バンク、マスター送出システム(NEC)
バーチャルスタジオシステムのデモ(朋栄)
機動性の高い携帯型伝送システム(KDDI)
恒例の人気イベント映像シンポジウム
 これまでのレポートを締めるにあたりInter BEEの歴史をひもといてみたい。前身である放送機器展が開催されたのは、わが国の放送界にとって最初の大イベントだった東京オリンピックの翌年の1965年のことである。82年、平和島の流通センターで開催されたのを機に海外からの参加も増え、Inter BEEの呼称もつけられ、今回がちょうど45回目の区切りの年になる。この間、Inter BEEは放送におけるイノベーションの大きな推進力になってきたが、エポック的なものを上げると、60年代のカラー化、80年代のBS・CS放送、90年代のハイビジョン、そして2000年代のデジタル化などである。そしてわが国が開発し育て上げたHDTVは今や世界の基幹メディアになり、さらに新たなるイノベーションに向け飛躍しようとしている。今やInter BEEは世界の放送技術、デジタルメディアをリードする大コンベンションに成長している。

 今回の大会の技術動向についてこれまで3回にわたり、カメラ関係、デジタルシネマの進展にあわせた3Dの潮流などについて見てきたが、本号ではファイルベース化が進む制作系、符号化やネットワーク技術の動向、また併催行事として開催された各種イベントについて概略を紹介してみたい。
 
 近年のIPの進展に応えるように放送局やコンテンツ業界のワークフローは効率的なファイルベース化が進んでいる。取材から制作、放送からアーカイブまで、コンテンツをファイルベースで管理、処理することで、ネットワーク経由で素材を共有し、放送以外への利用も広がり、コンテンツビジネスのボーダーレス化が進んでいる。

 三友は各局で進みつつあるテープレス環境にあわせ、各種のファイルベースシステムの実演をやっていた。その中でNHKとさくら映機が共同開発したノンリニア編集系"Prunus"は、テープメディアとXDCAM、P2HD、GFPAK各テープレスメディアにシームレスにリンクし、各種フォーマットを混在使用し、IPネットワーク上でサーバーレスで素材を共用することも可能なシステムである。今回、従来からの特徴であるVTRライクな操作性とリアルタイム性を継承し、機能をさらにアップさせたそうである。

 ソニーはファイルベースのワークフローとして、XDCAM HDやXDCAM EXカムコーダとノンリニア編集系をリンクし、送出系からアーカイブスまでカバーするトータルシステム"XPRI NS"を展示した。パナソニックは、ローカル局のデジタル設備更新に応え、ニュース番組送出を一人で行える「ニュースOTCシステム」を公開した。ワンマン操作の簡単なワークフローでコストパフォーマンスが高く、省スペース、省電力化したコンパクトなシステムで、小規模から大規模まで機能拡張性にも応えられる構成になっている。

 NECは放送ワークフローの改革を実現するものとして、記録メディアにHDD、フラッシュメモリーを選択でき、運用性、信頼性が高く多くの放送局に納入実績のあるビデオサーバ"Armadia"を核とするファイルベースの番組バンク・送出システムを公開した。東芝は今回、自社ブース出展を取りやめたが、フラッシュメモリーによるビデオサーバ"VIDEOS"を使った制作システムを武蔵のブースで公開していた。

 朋栄は進展するテープレス、ファイル化に相応しい「メディアマネージメント」システムを出展した。素材の取込み、編集、蓄積、送出からアーカイブまでコンテンツを一元的に管理し、制作支援する。MXFファイルとHD/SD-SDI信号の相互変換可能なコンバータ、番組素材を素早くファイル化し伝送するソリューション、エンコーダ・編集・トランスコーダの統合システム、さらにMXFファイル構築のための基本ソフト・マルチファイルコンバータで構成される。例年、人気のバーチャルスタジオは、新製品のセンサーレスのコンパクトでローコストの「VRCAMシステム」と独自アルゴリズムにより高品位な合成が簡単にできるクロマキーヤによる合成映像をデモし、見学者の関心を集めていた。

 進展する放送と通信の連携に応えるような符号化やネット配信に関する出展も多かった。

 NTT エレクトロニクスは放送局やCATV局向け素材伝送用のIRD(衛星放送受信機)を展示し、エンコード/デコードした映像と原画像を比較し画質や遅延を評価させていた。また普及が進むIPTV向け映像品質を管理するシステム、RF同軸ケーブルとIP回線でCATVや共聴向けのソリューションについても展示していた。NTT ATは非圧縮のHDTV映像をIPギガネットへリアルタイム伝送するIP Gateway、4K高精細映像の配信・録画・再生するJPEG2000リアルタイムコーデックなどを出展し、注目を集めていた。

 KDDIはビデオ映像をIPネットで高画質伝送できる機動性の高い"Vista Finder"システムを展示したが、可般型衛星通信アンテナ"BGAN"と組み合わせれば、世界中のどこからでも取材映像伝送が可能になる。独自開発のプロトコルを使い、衛星回線や大陸間の遅延の大きいネットワークでも高速にエラーなく伝送できるそうで、放送事業者にとり大変有効なツールだ。最近、ネットやBDでのデジタルコンテンツの流通が急増しているが、その際、有効な画質評価用ソフトウエアが興味を引いた。映像圧縮の前後で発生する画質劣化を自動的に高精度に判定評価することができ、従来人手によっていたコンテンツ制作ワークフローを大幅に効率化できるそうだ。同種の画質評価ツールは、アルゴリズムはそれぞれ異なるがニコンシステムとテクノシステム「クリアビュー(米)」が実演展示をやっていた。

 符号化、ネットワーク分野で高い実績を持つ富士通は放送局のワークフローとして「高画質映像の収集・変換・蓄積・配信」に関する技術を出展した。スポーツ中継などに使われる「422高画質リアルタイム伝送」、中継現場で有効な「モバイルHDリアルタイム伝送」、放送局内のファイルベース化を支援する「報道素材高速ファイル伝送」などを公開していた。

 最後に、機器展示にあわせ開かれた多彩なイベントについても概略を紹介しておきたい。恒例の人気イベントになっている"Inter BEE Content Forum"は、映像、音響分野に別れシンポジウムとチュートリアル・セッションが催された。映像シンポジウムは「コンテンツ創造におけるリアルティの追求」をテーマにジョン・ルイス氏(ニュージーランド)らにより、音響シンポジウムは「音楽制作の現状と将来動向」をテーマにマーク・ワルドレップ氏(米)らによる報告、ディスカッションが活発に行われた。チュートリアル・セッションは「デジタル映像信号のスタンダード」、「今さら聞けないデジタルオーディオの基礎」など4講座が開設されたが、昨年に続き盛況だった。

 定番行事の「民放技術報告会」は、3日間にわたり送出・制作技術部門、回線・伝送部門、データ放送・デジタルサービス部門、ラジオ・音声部門などのセッションに別れ、各局から約70件もの発表があった。特別企画として「IT技術やサーバと上手に付き合う方法」をテーマに、キー局とメーカサイドからの報告とパネル討論が行われた。トレンディなテーマだけに立見が出るほど盛況だった。

 昨年から併催行事になった「NAB東京セッション」は初日午後に国際会議場で開催された。基調講演は内藤総務副大臣が、新政権としての通信・放送政策、デジタル移行後の電波利用などについて基本的考え方を語った。その後、有識者により「欧州の放送・通信制度」、「日本版FCCと情報通信法」についての講演や「放送・通信新時代への期待と課題」についてパネル討論が行われた。

映像技術ジャーナリスト 石田武久


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