Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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Special 2020.01.07 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019 セッションレポート】「GYAOとAbemaTVに聞く映像メディアの次のステップ」〜プロフェッショナルコンテンツメディアの可能性〜

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ネットでテレビコンテンツはどう見られ、どうビジネス展開できるのか。そんなテーマで企画されたのがINTER BEE CONNECTED2日目のセッション「GYAOとAbemaTVに聞く映像メディアの次のステップ」だ。ネットでの動画サービスはユーザーが作った動画を共有するYouTubeのようなCGMか、Netflixに代表される高品質の映画やドラマが楽しめる有料サービスのどちらかだ。そんな中、無料でプロフェッショナルコンテンツが視聴できるサービスはGYAOとAbemaTVの2つだけと言っていい。テレビ局が参考にできるビジネスモデルとして、この2つを取り上げたセッションは多くの来場者で超のつく満員となった。その盛り上がりぶりをレポートする。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

様々な試みで進化してきたAbemaTVとGYAO

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このセッションのモデレーターは、自身もAbemaTVの番組に出演する論客でもある松浦シゲキ氏。スマートニュースのディレクターだがここでは所属会社の話題には触れずモデレーターに徹していた。
松浦氏の進行のもと、まずAbemaTVの現状についてサイバーエージェント常務取締役の小池政秀氏がプレゼンした。2016年に”開局”したAbemaTVは順調に伸びており、ダウンロード数は4,500万、20ものチャンネルを持ち34才以下が55%と若者中心のリニア型サービスだ。オリジナルコンテンツの視聴とともに総視聴時間も増えており、それに伴って売上も伸びているという。
コンテンツでは「オオカミくんには騙されない」など数種類の恋愛リアリティショーが若者層に人気を博している一方、「山里蒼井会見」のように"何かあったらアベマ"のイメージができつつあり、一定の評価をされている。地上波でデビューした岡田健史主演のドラマ「フォローされたら終わり」も話題になっており、ヒット作が次々に出ている。

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注目したいのがそのビジネスモデル。番組にCM枠を設ける広告収入を核にしつつ開局以来取り組んできたサブスクリプション会員も伸びてきており、またコマース事業や投げ銭システム、2019年に開始したギャンブルなど多様にマネタイズ手法を広げている。リニア型で視聴者を増やすことで多面的なビジネス展開も可能になっていることは、既存のテレビ局にとって大いに参考になる話だと思う。

次にGYAOの代表取締役田中裕介氏がその概要をプレゼン。2005年にUSENの事業としてスタートしたGYAOだが、Yahoo!の傘下となってから順調に伸びてきた。様々なコンテンツが視聴できる中で、テレビ局にとっては番組の見逃し配信のパートナーとなっている。最近はドラマの各話の間を埋める「0.5話」を配信する「チェインストーリー」を配信する場として関西テレビ、読売テレビに続いてテレビ東京も活用している。また関西地区や中京地区の番組を全国に配信するエリア補完や、エフエム東京やTBSラジオとラジオ番組連動の動画配信も行っている。そうした地上波放送局とのコラボ番組だけでなく、音楽フェスの配信ではBS/CS放送とも連携。放送局にとってネットでの頼もしいパートナーとなった。

リーチが伸びて広告モデルがうまくいけば他のビジネスモデルも広がる

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後半のパネルディスカッションでは、モデレーターの松浦氏が様々なテーマで突っ込んだ質問をしていった。特に注目したいのが、終盤で出たビジネス寄りのテーマだ。
松浦氏の「動画にどう広告価値を出すか?」との問いかけに、田中氏は「プロフェッショナルコンテンツはネットでも圧倒的な没入感を持って視聴してもらえる。リビングルームだけでなく、出先などいろんなオケージョンでも没入できるのは大きな強みだと思う。さらにGYAOはYahoo!のECやPayPayと結びつくことで、オンラインでもリアルの場でも購入まで捕捉できるようになる。広告出稿から売上にどう繋がっているかがわかる仕組みに取り組んでいる」と述べた。
小池氏は「AbemaTVはプロフェッショナルコンテンツなので100%のブランドセーフティを確立できる。またインストリームでこれほど大きな規模で広告を流せる場はネットには他にない。そこにインターネットの良さを生かしてターゲティングも加えていきたい。視聴完了率も90%近くあるので、広告価値は高いと思う。新たな指標を確立してその価値を示したい」と意欲的にコメントした。

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両方ともプロフェッショナルコンテンツだからこそ「見てもらえる」ことを価値のベースに置いているのが興味深い。
また最後の質問として「ビジネス価値は、広告と課金のどちらにあるか?」と松浦氏が聞くと、田中氏は「ゆくゆくはAVOD、TVOD、SVODを兼ね備えたハイブリッドモデルに向かっていきたいが、まずはリーチをベースにした広告モデルを伸ばしていく。SVODについては今はHuluへの送客を重視している。個別課金をやっているのはお客様に品揃えを示すバックアップの役割だ」と述べた。
一方小池氏は、「リニアを見て都合のいい時にオンデマンドで見てもらい、もっと快適に見たい人には有料課金で楽しんでもらっている。リニアが伸びることでSVODも自然に伸びてきた。また課金=SVODではなく、コマースもやっているし様々な形の課金が可能になっている。」と述べ、リニアを核にすることで多様なマネタイズが広がることを感じさせた。
説明の仕方やビジネスモデルは違うが、両方とも広告モデルをベースにすることで課金モデルにも広げられると言っていたのが面白い。テレビ局のネット展開でも参考になるのではないだろうか。非常に濃厚な議論で、様々なサジェスチョンに満ちた充実したセッションとなった。

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