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2018.1.31 UP

【INTER BEE CONNECTED 2017報告】(12)「テレビの再定義」3人の俊英たちが示す“あたらしいテレビ”

HAROiD岸氏は。テレビ番組を作るというより。テレビを演出装置にした遊び場づくりが自分の取組みだという
HAROiD岸氏は。テレビ番組を作るというより。テレビを演出装置にした遊び場づくりが自分の取組みだという
NHK小国氏が担当する「NHK1.5チャンネル」では番組を再構築し。短い尺の映像でネット上に展開
NHK小国氏が担当する「NHK1.5チャンネル」では番組を再構築し。短い尺の映像でネット上に展開
「来年から五年後ぐらいで何をやっていたいか」との問いに。三人とも極めて前向きでテレビの楽しい将来像を描いてくれた
「来年から五年後ぐらいで何をやっていたいか」との問いに。三人とも極めて前向きでテレビの楽しい将来像を描いてくれた

 「テレビの再定義〜最前線の制作者たちは、今。テレビをどう捉えているのか〜」という非常に先鋭的なタイトルがつけられたこのセッションは。最終日の最後に開催されたInterBEE Connectedのフィナーレを担う企画だ。
 昨年も同じタイトルで多くの来場者で座席が埋まった。モデレーターのNHK倉又俊夫氏。フジテレビ下川猛氏。HAROiD岸遼氏の三名は昨年に引き続いての登壇。NHK小国士朗氏が新たに加わりセッションにさらなる新鮮さを加えてくれた。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)


■FODの番組を多面的に配信する下川氏、テレビを通じ場を作る岸氏
 テレビの今後の姿として動画配信が語られてきたが。ここ数年でそれは様々な形で具現化されてきた。このセッションの企画意図は。「動画配信のさらに次」を見出す議論を。最先端の仕事をしているパネリストにディスカッションしてもらうことにある。それは「テレビの領域の再定義なのです」とのイントロダクションを倉又氏が語った。

 まずフジテレビ下川氏が。自身の最近の事例を紹介。FOD(フジテレビオンデマンド)で配信するオリジナルコンテンツをプロデュースする下川氏。それらのコンテンツは。地上波でも一部放送したり。Netflixでも配信されたりと。縦横無尽にプラットフォームを行き交っている。放送されない。もしくは放送が後回しになる番組制作は、ひとつのテレビの再定義と言えそうだ。

 HAROiD岸氏は。テレビ番組を作るというより。テレビを演出装置にした遊び場づくりが自分の取組みだという。例として見せたのはKIRIN氷結のテレビCM。CM画面に登場した女優・波瑠とスマホを通じて「だるまさんがころんだ」を楽しむことでクーポンが手元に届く、というシンプルだが技術的には途方もない企画を具現化し。莫大な人数が参加した。テレビの前の視聴者を実際に“動かす”という新しいテレビの姿を見せてくれた。


■番組を解体し再構築してネットで流す小国氏の試み
 NHK小国氏は。“番組を作らないディレクター“だと自己紹介する。いくつか見せてくれた事例の中でも「NHK1.5チャンネル」は番組とはおよそほど遠いテレビの形を実現している。NHKの番組を再構築し。短い尺の映像でネット上に展開しているのだ。
 例えば「ためしてガッテン」は番組で出てきた情報だけを元にガツという魚屋の青年とテンという犬とで展開するショートアニメだ。もともとの番組が伝えていたエッセンスだけを取り出して別のものに作りかえたようなコンテンツ。これが時により莫大な再生数をたたき出すこともあるという。まさに「テレビを再定義」したコンテンツといえるだろう。


■テレビはテレビと戦っている?
 こうした最先端の活動をする制作者3人に。倉又氏はソリッドな質問を投げかけていく。
「テレビは何と戦っているか」という難しい質問に下川氏は「恋人とのLINEでしょうか。テレビに圧倒的時間を費やしていたのがプライベートな関係に時間を使うようになっている」と答えた。
 一方小国氏の「テレビはテレビと戦っている。テレビの人たちはテレビというものに囚われてもがいている」との答えに岸氏も「決まりごとの枠の中で固定概念をこわせないでいる。必要なのはほぼ勇気だけ」と賛同した。

 また「ポストテレビの時代が来る。来年から五年後ぐらいで何をやっていたいか」との問いには。小国氏が「もっともっとテレビをしゃぶり尽くして社会にインパクトを与えたい。テレビは可能性のカタマリだ」と答えると、岸氏は「集まった人をヨコにどうつなげるか、テレビを人と人を実際につなげる場所にできたらと思う」と発言。
 下川氏も「この会場に展示されている最新技術があれば可能性しかない。費用も1本分で10本分つくれるだろうし、テレビは拡張していく時期だと思う」と答え。三人とも極めて前向きでテレビの楽しい将来像を描いてくれた。

 これを受けて倉又氏が「テレビの未来は単なる“ビデオ自動販売機”ではないはずだ。新しい豊かなテレビの未来をみんなで作っていこう」とポジティブに締めくくった。配信こそがテレビの未来だ。という考え方から。次のステップへ我々を導く強い意志を感じさせてくれるセッションだった。

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