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2018.1.22 UP

【INTER BEE CONNECTED 2017報告】(9)「ラジオからメディアの未来を考える」ラジオはネットメディア化し、放送を越えていく

関西大学・三村教授「ラジオはネットメディア化したのでデジタル広告予算を堂々と取りに行ける」
関西大学・三村教授「ラジオはネットメディア化したのでデジタル広告予算を堂々と取りに行ける」
radiko青木社長「全盛期から半減したラジオ広告費を回復するために、ネット広告という“大きな財布”を狙っていく」
radiko青木社長「全盛期から半減したラジオ広告費を回復するために、ネット広告という“大きな財布”を狙っていく」
TBSラジオ三村氏「一番いい共存のしかたはradikoアプリで音楽を聴けるようになること」
TBSラジオ三村氏「一番いい共存のしかたはradikoアプリで音楽を聴けるようになること」

 各社によるAIスピーカーの市場投入により、音声メディアへの注目は増す一方だ。その代表はもちろんラジオ。INTER BEE CONNECTEDは、ラジオの進化を取り上げ続けてきたが、本セッションではタイトルどおりラジオがメディアの未来を先取りしていることがはっきりと聞こえてきた。モデレーターの関西大学社会学部教授・三浦文夫氏、パネリストの株式会社radiko社長・青木貴博氏、TBSラジオメディア推進局長・三村孝成氏は3人ともradikoの立ち上げに深く関わっている。
(取材・文:関根禎嘉)


■AIスピーカーとradiko
 2010年12月の本配信開始から8年を数えるradikoの細かい説明は不要だろう。現在、参加局90局、MAU1,000万~1,100万人、DAU100万人という規模に成長。地域外(エリアフリー)聴取ができる会員サービス・radikoプレミアムには45万人が加入し、タイムフリー(聞き逃し)聴取は月間270万人が利用している。

 そのradikoは、AIスビーカー時代の到来にどうキャッチアップしていくのか。現在市販されているAIスピーカーはすべてradikoに対応している。青木氏が「音で情報を得ることになれば、radikoがぐっと生活者に近づく」と述べる。さらにはイヤホン利用からスピーカーへの回帰にも期待が寄せられている。


■ネットメディア化するラジオ
 より未来を感じたのがビジネス面の議論だ。マスとネットの境界がなくなりつつある中、ラジオ業界はプログラマティックオーディオアドを2018年に導入するべく検討を進めている。全盛期から半減したラジオ広告費を回復するために、ネット広告という“大きな財布”を狙っていくと青木氏は力を込める。
 三村氏も「ラジオはネットメディア化したのでデジタル広告予算を堂々と取りに行ける」と鼻息が荒い。

 しかし一方で、ラジオのネットメディア化は他のネットメディア、とりわけサブスクリプションサービスと本格的に競合していくことになる。さらに、青木氏は2020年には始まると言われているテレビの同時配信を見据え、「あと3年で必死になってやらないといけない」と危機感を隠さない。

 背景にあるのは音声メディアだけではなく、テレビとも真っ向勝負になるという世界観だ。「radikoをどうやったらスマホのデフォルト10個のアプリにしてもらえるか」との三村氏の発言は、完全にネットサービス事業者のそれだ。

 より激しい競争に直面していくことになるが、共存するという考え方もあると三村氏。「一番いい共存のしかたはradikoアプリで音楽を聴けるようになること」という提案は大胆に思えたが、ユーザー目線では同じ音楽ドメインのサービスがひとつのアプリで利用できれば便利に違いない。
 「別のアプリだと本当の競合になってしまう。(同一アプリ内で)行ったり来たりができるほうがいい」という三村氏の提言は、各局のアプリが林立するテレビの側から聞いたとき、非常に示唆的だ。


■radikoは放送を越えたプラットフォームへ
 つまり、radikoが目指しているのはスマホでラジオ放送が聴けるという地点をはるか越えた「ラジオを中心としたオーディオプラットフォーム」(青木氏)にある。

 今後無料ユーザーの会員組織を作ればCRMが可能になる。全世界展開やradikoアプリ上での楽曲やチケット販売などの商取引、各地方局と結び付いた地域通貨なども視野に入っているという。実現すればオーディオをも越え、インフラと呼びうるプラットフォームに成長する可能性がある。
 
 けれども、三村氏は「インフラが整備できても、最終的には音としての番組がどういう競争力を持つか」と、ラジオの原点に立ち返ることを忘れない。
 仕組みをアップデートすることによってコンテンツ自体の魅力を十分に伝えることができるという視座は、メディアに携わる者たちが未来に向かっていくためには必須ではないだろうか。

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