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2017.11.12 UP

【Inter BEE 2017】INTER BEE IGNITION 基調講演 パネルディスカッション 「放送局が人工知能を徹底活用するためには」 放送局のAI活用最前線の担当者が登壇

(左から)日本テレビ放送網 川上皓平氏、日本放送協会 神原一光氏、SENSORS.jp編集長 西村真里子氏
(左から)日本テレビ放送網 川上皓平氏、日本放送協会 神原一光氏、SENSORS.jp編集長 西村真里子氏
盛り上がるセッション当日の話題についての打合せ。当日が楽しみだ
盛り上がるセッション当日の話題についての打合せ。当日が楽しみだ

 Inter BEE 2017の2日目、11月16日の13:30から15:00まで開催するINTER BEE IGNITIONの基調講演では、テーマを「人工知能とともに進化する放送局」とし、落合陽一氏による「映像の未来 ~感情、創作、消費~」と題した講演と、「放送局が人工知能を徹底活用するためには」と題したパネルディスカッションが開かれる。
 パネルディスカッションでは、基調講演に登壇した落合氏とともに、実際に放送局内で人工知能を用いた番組制作や、人工知能をテーマにした番組作りを手掛けている2人の制作者が登壇し、放送局における人工知能の現時点での位置付けや、局内でAIの推進役として奮戦する2人の意見や展望が展開される。

 Inter BEE Online編集部では、コーディネーターの西村真里子氏が、講演前に2人と打合せをする会議室にお邪魔し、パネルディスカッションにおいて、3方がどのような話しをしていくのか聞くことができた。

■注目のNスペ「AIに聞いてみた」のねらいと今後
 日本放送協会 放送総局 大型企画開発センター ディレクターの 神原一光 氏は、これまでNHKスペシャルを数多く制作。取材を通じて、課題先進国・日本に横たわる様々な社会問題を見つめ、処方箋の糸口を探してきた。その中で、神原氏はこれまでの大学教授や官僚・論客と解決策を探る番組のスタイルに「一定の限界がある」と感じ「新たな光を当てる番組の新機軸として人工知能に着目した」という。
 そこで「パターン認識やニューラルネットワークなど人工知能の能力を駆使して、膨大な統計データや指標を計算したらどんな分析結果がでるか。それは社会問題解決のヒントになりうるか」を番組化したのが、7月に放映された「AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン」だ。番組は、2020年まで続く「NHKスペシャル」の大型シリーズで、今後6本の制作が予定されている。

■AIによる次世代ジャーナリズム
 神原氏は、放送局がAIを活用する方法として、現在「業務の効率化・省力化」「広告、マーケティングのための情報分析」と「次世代ジャーナリズム」の大きく3つが挙げられると話す。神原氏は公共放送NHKが果たす役割として「次世代ジャーナリズム」としてのAIの活用に活路を見出せたらと考えている。
 「AIの強みとして、車の自動運転や囲碁など、ルールや枠組が決まっていて正解が分かる特化型がありますが、社会課題の解決というテーマの場合、何が正解はわからない。そのため、番組では、AIの分析結果から制作者が「提言」を導き出し『一石を投じる』演出スタイルをとりました。「提言」の背景に何があるのか、AIの分析結果を専門家とともに、くわしく解析したり、実際の現場を取材で見つけていくことで、課題解決への新たな視点を見出していく。こうした探求、模索する行為自体が、新たな調査報道のスタイルになっていけばテレビはもっと面白くなると思います。膨大なデータから、人間も予想していなかったような新たな視点をAIが提示してきたら、テレビ番組としても、ジャーナリズムとしても、AIと一緒に進化していくことができるのではないかと考えています。」

■自律型アンドロイド「ERICA」がInter BEE会場に登場
 日本テレビ放送網株式会社 技術統括局技術開発部(兼) 日テレラボ調査研究部の 川上 皓平氏は、所属する技術統括局技術開発部や、日テレラボ調査研究部において、テレビ局に関わるさまざまな新技術の研究開発をしている。今年夏のドラマ「過保護のカホコ」では、放映期間中、主人公のカホコをAIキャラクター化し、LINEのメッセージにリアルタイムでこたえる「AIカホコ」を提供。約40万人が参加した。「テレビ視聴だけでなく、ドラマの世界観や主人公のキャラクターを身近に楽しんでもらおうと考えた」(川上氏)という。

 川上氏は日本テレビへの入社以前からロボットを研究しており、放送局の中でロボット・AIを活用するのが入社の動機だったという。 日本テレビは今回、INTER BEE IGNITIONのブースで、アンドロイドを出展する。名前は「ERICA」だ。ブースでは「アンドロイドERICAの部屋」にて、かけあいを楽しんでもらう予定のほか、Inter BEEの一日のできごとをニューススタイルで紹介する「デイリーレポート」も連日実施する。
 「マツコとマツコ」で活躍したマツコ・デラックスのアンドロイド「マツコロイド」などを生み出した大阪大学の石黒教授はじめ、京都大学、株式会社国際電気通信基礎技術研究所との共同研究ということだ。マツコロイドなどでは実在のモデルがあるが、ERICAは、日本女性の美人顔の特徴を表現したモデルだという。

■AIの人格化は可能か
 アンドロイド「ERICA」のテレビ局での活用を進める川上氏は、今後の展望を次のように話す。「ERICAの研究では、アンドロイドに、人間の特徴など様々な要素を組みこんで、人と対話します。ERICAが色んな人と出会うことがまず大事ですね。これからは、さらに日本テレビのノウハウをつぎこんで、テレビで活躍できる存在になってほしいと考えています」
 AIが番組出演を目指す段階として、川上氏は次のように話す。
 「人間と同じように、最初は決められた原稿を読んだり、先輩の原稿をまねて読んだりしていく中で経験を積み、学習していくことで、自分なりの個性・人格を持つようになると期待しています。アンドロイド自身が好奇心を持って、個性を形作っていけるかどうかを研究していきたい」

■世界から注目集められるか。日本の放送局のAI活用
 実際にAIを番組に取り込む試みは、世界でもまだ例が少ない。コーディネーターの西村真里子氏は、AIが進化し、注目を集めている状況について、VRや3Dと同様、技術がもたらした大きな波、ブームと見る。
 そうした中で、VRは幅広い産業で実際に使われ始めており、ある意味、ブームを越えて「あたりまえ」になりつつある。西村氏は「AIも同様に、現実の延長線上にあるということを出していくことで変わっていくはず」という。「今のAIブームをどう定着させて、次の段階にいくのか、その方向性と登壇される3人の方々が考えている今後のスケジュールを聞いてみたい」(西村氏)
 西村氏はまた、来場する業界関係者にも「意識の切り替えを期待したい」ともいう。
 「指をくわえて待っていてもなにも起きない。放送業界やクリエイターもAIの活用について積極的に参加し、ノウハウ、技術、使い方を自分たちのものにしていくことで、次のノウハウにつなげていくことができるのでは。そういう刺激を与えるセッションにしたい」(西村氏)

◆INTER BEE IGNITION 基調講演 ◆
人工知能とともに進化する放送局
基調講演「映像の未来 ~感情、創作、消費~」
落合 陽一 氏
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 代表取締役筑波大学 学長補佐・図書館情報メディア系助教

パネルディスカッション「放送局が人工知能を徹底活用するためには」
(パネリスト)
落合 陽一 氏
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 代表取締役筑波大学 学長補佐・図書館情報メディア系助教
神原 一光 氏
日本放送協会 放送総局 大型企画開発センター ディレクター
川上 皓平 氏
日本テレビ放送網株式会社 技術統括局技術開発部(兼) 日テレラボ調査研究部
(モデレータ)
西村 真里子 氏
SENSORS.jp編集長 株式会社HEART CATCH 代表取締役

(会場)
国際会議場2階 「コンベンションホールA」
(日時)
11月16日(木)13:30-15:00

(聴講には、事前の聴講申し込みが必要です。下記サイトからお申し込みください)

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