Special

2017.3.6 UP

【SPECIAL】Inter BEE 2017出展募集説明会開催報告(2)専門家による映像制作や動画配信の最新状況について講演

「ワークフローの重要性が増している」と話す石川氏
「ワークフローの重要性が増している」と話す石川氏
これまで以上にワークフローの重要性が増している(石川氏資料)
これまで以上にワークフローの重要性が増している(石川氏資料)
優れたコンテンツや制作会社の囲い込みが激化していると話す塚本氏
優れたコンテンツや制作会社の囲い込みが激化していると話す塚本氏
2017年、メディアビジネスは新たな局面を迎える(塚本氏資料)
2017年、メディアビジネスは新たな局面を迎える(塚本氏資料)

 前回の第1回に続き、3月2日(木)に開催したInter BEE 2017 出展募集説明会についてご紹介する。
 前回紹介したように、Inter BEEは今後3カ年で、コンテンツの「つくる」「おくる」「うける」の3つの構成要素を網羅する「メディア総合イベント」としてのステップアップを目指すとした。
 第2回の今回は、放送・映像業界における3人の講演者による「つくる」、「おくる」、「うける」の3つの講演のうちの、2つ「つくる」と「おくる」についての各専門家による講演を紹介する。

■石川氏「映像的表現はLOOKが重要」
 最初の「つくる」では、映像ジャーナリストの石川幸宏氏が登壇。石川氏は冒頭、映像制作における高解像度への偏重について「放送行政等の政策面での方針は別として、制作現場においては高解像度だけでなく、映像的表現の『LOOK』が重要である」と指摘。現行の4Kと2.5Kのシネマカメラでの撮影テストの結果を紹介し、それぞれねらいに応じて使い分けることの重要性を強調した。4Kのカメラが、リアリスティックでクリアな映像であるのに対し、2.5Kのカメラはソフトでスイートな印象があり、誰もが見やすいとし、実際にハリウッドで多くの支持者を得ていると述べた。
 石川氏は、こうした差が出る背景として「レンズやカメラのセンサーサイズ、プロセッサーの処理能力など、総合的なチューニングによって映像のLOOKが決まる」と説明。そうした中で、「カメラ本体の性能が向上し、各社とも安定した性能を出す中、表現の違いを出すために、レンズの使い方が注目されている」と述べ、最近の映画でも、「相棒 IV」が2Kのカメラやオールドレンズを用いた撮影をしていることなど、映像表現の最前線でも解像度によらない、新たな試みが進められていることを紹介した。

■多様な制作手法、それぞれに進化
 石川氏はまた、「一方でワークフローの重要性も増している」とし、「最終的なコンテンツの形式、デリバリーの方式が何になるかで、制作効率やコストパフォーマンスを考慮した最適なワークフローのデザインが求められている」と述べた。
 こうした状況の中で、「4K RAWデータ処理はハイバジェット作品が中心だが、ローバジェットでも安価な機材でRAWやLogを取り扱うエキスパートが増えている。HDでもLogを利用し、HDR撮影などによる高品質な映像撮影が可能になっている。さらには、カメラの画質コントロール機能の向上で安価で高品位の撮影も可能」とし、「クリーンな映像を求められる映像表示の優秀さと、ストーリーを重視した映像表現の美しさとは別物」であると述べた。

■スペックや慣習にとらわれずに判断できる眼力
 さらに、コンテンツの表現手法やデバイスの多様化が進み、個人、少人数単位の制作機会が増える中で、「現場のクリエイターでも、映像制作のリテラシーが乏しい、情報が偏っている」状況になっていると指摘。
 「機材のスペックなど、一過性の情報はネットで充分に入手できるが、継続可能な知識が身につく機会として、Inter BEEのようなリアルイベントがますます重要になっている。人の間での様々な指向性を共有できる機会として、活用してもらいたい」と述べた。
 最後に「日本のプロダクションが目指すべきもの」として、
 ・既存のジャンルや制作様式を飛び越えた、新たな制作チームの受入れ、交流
 ・新たな技術=新型コンテンツをシームレスに受け入れるワークフローデザインの構築  ・機材スペックやこれまでの慣習にとらわれず、良い映像を判断出来る、眼力を持つ
 ・もう一度、映像制作の基本を学び直す
 の4つを掲げて講演を終了した。

■塚本氏「プラットフォームの乱立で激化するコンテンツ囲い込み合戦」
 続いて登壇したワイズ・メディア 代表取締役、メディアストラテジストの塚本幹夫氏は、「おくる」にフォーカスした最新動向の解説をした。
 まず、この約1年間に関連した出来事として、Netflixの国内でのサービス開始(2015年9月)や、Amazonのプライムビデオの開始(2015年9月)など、さまざまな動画配信の新たな事業展開を紹介し、これらの動きから「3つのトレンド」を導き出した。
 1つ目は「プラットフォームの乱立とSVOD化」で、これにより、これまで同様のコンテンツラインアップでよしとしていた競合がコンテンツのラインアップによる差異化を積極的に進め、それにより、優れたコンテンツや制作会社の囲い込みが激化していると解説。
 2つ目のトレンドとして、「放送局の配信手段の多様化」を挙げ、TVODに加えて、ADVOD、SVODなど、同一の局でも複数の動画配信サービス提供を進めている現状を紹介した。
 最後の3つ目として、塚本氏は「リニア型配信」をあげ、その代表例として。AbemaTVの急成長を紹介した現在、開局から9カ月で1,300万ダウンロードを達成し、現在でも勢いが衰えない。塚本氏は、AbemaTVの躍進により「タイムシフトとデバイスシフトによりテレビ離れが進んできたという定説を覆した」と指摘する。
 リニアサービスは現在、Amazon、Youtubeが開始するといわれており、国内でも動きが出ているという。「赤字前提でとにかく成長させるという戦略。当面利益にならなくても配信をはじめていくという空気はとまらない」と分析した。
 塚本氏は、これらの特徴的な動きから、コンテンツの囲い込みが活発化し、系列の枠を超えたコンテンツの獲得合戦が展開されている現状を紹介。「良いドラマ、良いプロダクションにはどんどんとにかく金をおしまずアプローチ。制作力がある局、製作会社に新たなビジネスの可能性が生まれている」と解説した。

■放送業界全体の"同時配信"に向けた動き
 続いて、行政の動きとして、NHKの放送同時配信への動きや、それによる受信料負担に関する検討などの経緯を紹介し、「2020年のオリンピックで実現するには、法改正を含めて間に合わせる必要がある」と説明した。
 また、「民放も同時配信に向けた動きを活発化している」と述べ、「放送業界全体の同時配信に向けた動き」として、昨年10月、総務大臣の諮問を受けた情報通信審議会が
「放送コンテンツの制作・流通の促進等に関する検討委員会」を設置。慶応大学・村井純教授を主査として、同時配信の環境整備(権利処理と配信コスト軽減)の検討がスタートしたと紹介。ワーキンググループには放送、通信、広告代理店、ライツホルダー、文化庁、経産省とオールジャパンで関係者を揃え検討が開始されている。そうした中で、4K地上波配信、モバイル向け同時配信、製作取引適正化の3つのタスクフォースを設置され、夏の答申に向け水面下の折衝に入ったことを紹介した。

■メディアのイノベーションを世界に知らしめる舞台に
 塚本氏はまた、「配信ビジネスは、バックヤードでも新たな展開が進んでいる」とし、昨年12月に日本テレビとIIJが動画配信の技術プラットフォーム会社「JOCDN」を設立したことを挙げ「放送局を絡めたバックヤードの競走が始まったといっていい」と述べた。
 最後に塚本氏は、これまでの動向を踏まえ今後の展開を次のように予測した。「2017年に入り、メディアビジネスはさらに新しい局面に入る。ライブストリーミング、放送同時配信、リニア型配信サービス、著作権問題、放送法改正と新規サービス、バックヤード競走など、多岐にわたって新たな展開が生まれる」
 最後に「本来、これらは断片的にな事象としてしか分からないことだが、Inter BEEにおけるINTER BEE CONNECTEDでは、すでに2015年にNHKの同時配信をテーマとしたセッションを実施。昨年は、ライツホルダーから見た配信サービスと題して、ライツホルダーの方々に登壇いただき、考え方を披露していただいた。Inter BEEは、もうすでに放送技術の展示会だけではなくなっており、放送業界、コンテンツ業界、メディア業界自身が踏み出す新たなイノベーションを、世界に知らしめる舞台になっている」と述べて講演を終えた。(第3回に続く)

編集:Inter BEE 2017 ニュースセンター

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