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2017.2.24 UP

【INTER BEE CONNECTED セッション報告(13)】「テレビの未来は面白い?映像メディアの将来展望」三人の論客から見た、テレビの現状とこれから。

「自信を持っていれば2020年も最強のメディアであり続けるはず」と言う吉田氏
「自信を持っていれば2020年も最強のメディアであり続けるはず」と言う吉田氏
「東京オリンピックでは“分散型“映像メディアが主流になっているはず」と話す藤村氏
「東京オリンピックでは“分散型“映像メディアが主流になっているはず」と話す藤村氏
「すべてのテレビ局が“一家”であると考えて、協力をしながらがんばれば、テレビが再生するのでは」と吉田氏
「すべてのテレビ局が“一家”であると考えて、協力をしながらがんばれば、テレビが再生するのでは」と吉田氏
眼差しの真摯さ、冷静さからも、テレビへの強い期待がにじむセッションだった
眼差しの真摯さ、冷静さからも、テレビへの強い期待がにじむセッションだった

 2016年11月18日から20日、Inter BEE の3日間開催したINTER BEE CONNECTED企画セッション、最後のセッションは「テレビの未来は面白い?映像メディアの将来展望」。三日間の濃いセッションの締めくくりとして、テレビの外側からその動きを見つめている三人の論客を招いて、その現状とこれからについて語ってもらう企画だ。フジテレビで数々のヒット番組を制作して、いまはオールラウンドでコンテンツをプロデュースする吉田正樹氏。日刊スポーツの記者として日々現場を駆け回りながらコラム「梅ちゃんねる」も連載する梅田恵子氏。スマートニュースの執行役員であり、先進的なメディア論を個人ブログで展開する藤村厚夫氏。この三人をパネリストに、メディアコンサルタント境治氏がモデレーター役を務めた。

■豊作だったドラマ
 セッションの最初は、入りやすい話題として「いまドラマがホット」という話題からはじまった。ドラマについてよくコメントする梅田氏は「このクールは『逃げ恥』『校閲ガール』『黒い十人の女』など豊作」と発言。吉田氏は「『逃げ恥』の恋ダンスや『校閲』のファッションなどがネット民に受けて拡散されているのだろう」と述べた。

■「ソーシャルの話題づくりも大事」
 これを受けて境氏が、ビデオリサーチ社のタイムシフト視聴率について意見を求めると吉田氏が「自分はできるだけリアルタイムで視聴する。一流の視聴者の自負として」と冗談めかして言ったのに対し、梅田氏は「夜遅く帰宅して体制を整えてから録画で見る」と胸を張る。一方藤村氏は「自分も『逃げ恥』の話題をソーシャルで追ってリンク先を見るとYouTubeだった」と述べ、ソーシャルでの話題づくりと、その先の設計も大事ではないかと投げかけた。
 「『逃げ恥』の視聴率が上がっているのなら、ダンス動画で知り、記事で知り、見逃し視聴で知り、とあちこちに分散している状態の終着点がテレビ視聴という流れがうまくできているのではないか」と、起こっているメディア現象を解説した。梅田氏はさらに「TBSはここ数年ネットの活用で努力してきて、それがドラマそのものの良さと合致して良い結果が出ているように思う」とTBSの努力の成果を指摘した。

■『逃げ恥』に分散型メディアの片鱗
 こうした断片化するテレビ視聴を考えるヒントとして、藤村氏が分散型メディアを解説。「自分の場所に来てもらうのがこれまでのメディアだったが、FacebokやTwitterなど他の場所でも読んでもらうことができ、それもビジネスになるような形態が出てきている。それを分散型メディアと呼ぶ」という話をした。この考え方と『逃げ恥』があちこちで接触される状況は同じと言えるかもしれない。あるいはフジテレビのホウドウキョクのリニューアルはまさに、分散型メディアの形を整えたものだった。これを受けて吉田氏は「どこでどこから見てもいい、というのはこれまでの“総合編成”の考え方にとって難しい時代になったと言える。だがもともと報道とはそういうものかもしれない」と感想を述べた。

■デジタル移行期の苦労
 一方デジタル化が進むと、制作現場は大変な作業が増える。梅田氏は活字メディアで紙からデジタルへの転換を一足先に経験した。「まだまだ過渡期で、同じ会見に紙とデジタルの編集部がそれぞれ行き、原稿を出すタイミングごとに何度も記事を書くこともある。」と苦労を話した。藤村氏はアスキー編集部にいた頃に最初のデジタル化を経験している。「紙の編集と並行してデジタルを、当時はお金にあまりならないのにやらされた。それで自分がIT mediaを起ち上げる時はデジタルだけでやろうと決めた」のだそうだ。

■テレビの正念場
 ここで境氏が初日の若者セッションで“大学生たちが番組に参加したいと言っていた”ことを紹介すると、吉田氏は「テレビは以前も視聴者を巻き込もうとして来た。そしていまのテレビは時間の縛りがなくなったため、いよいよ番組のファンを作らねばならなくなった。そこは今後の正念場となる」と話した。

■ソーシャルで伸びるテレビの視聴率
 また境氏がライブ配信に話題を振ると、藤村氏が「アメリカ大統領選では各メディアがライブ配信を24時間続けた。それによって視聴者とエンゲージメントを高め、視聴率も伸びている。視聴者がソーシャルメディアでやりとりしている中に入っていくライブ配信で、テレビの影響力は高まるはず」と話した。

■中国市場へ向けたビジネス
 そしてライブ配信の話題から、吉田氏が中国の状況を解説。「中国では個人がインフルエンサーになって配信してビジネスにもなっている。中国マーケットに影響力のある日本人を作っていくプロジェクトに参画しているところだ」と自らの動きにもふれた。

■2020年、テレビの活躍に期待
 最後に、2020年のテレビはどうなっているか、どうあってほしいかをそれぞれに語ってもらった。藤村氏は「東京オリンピックでは“分散型“映像メディアが主流になっているはず。従来の放送型とは別に、小さなデバイスで各競技を伝えられないと。急がないといけない」、梅田氏は「いまテレビ局を取材すると萎縮してしまっている。自信を持っていれば2020年も最強のメディアであり続けるはず。新聞に携わる自分にも言い聞かせているが自信を持って欲しい」、吉田氏は「すべてのテレビ局が“一家”であると考えて、協力をしながらがんばれば、テレビが再生するのではないか」と話した。

 三人のテレビとの関わりはそれぞれちがうが、見つめる眼差しの真摯さ、冷静さは共通していたように思える。そしてテレビに強く期待している点も同じだった。3つの視点のコメントが、テレビ界にとって参考にできるセッションだったのではないだろうか。

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