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2017.2.22 UP

【INTER BEE CONNECTED セッション報告(12)】「進むテレビ“再定義”への挑戦」エッジの鋭い意見が飛び交い、濃縮された熱のこもった議論に!

テレビとネットがつながることでどのような未来が広がるのか、活発な議論が交わされた
テレビとネットがつながることでどのような未来が広がるのか、活発な議論が交わされた
倉又氏は「見逃し配信が1段目、同時再送信が2段目で、3段目が何かを考える時だと思う」と問いかけた
倉又氏は「見逃し配信が1段目、同時再送信が2段目で、3段目が何かを考える時だと思う」と問いかけた

 INTER BEE CONNECTED企画セッション、三日目四番目のセッションは「進むテレビ“再定義“への挑戦」。テレビの将来像は各局が番組をネットで配信するようになったことで一気に具体的に見えてきた。だがテレビの未来は動画配信だけなのか、という疑問も残る。むしろ動画配信の次に来るべきテレビの新しい姿を探るべきではないのか。このセッションでは、そんなテレビの最先端への挑戦を議論するのが趣旨だ。フジテレビ・コンテンツ事業局の下川猛氏、NHK大型企画センターの神原一光氏、日本テレビからHAROiDに出向中のプランナー・岸遼氏をパネリストに、NHKデジタルコンテンツセンター・倉又俊夫氏のモデレーションで進行した。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

■テレビとネットがつながる未来
 まず倉又氏が、セッションの趣旨を説明。ちょうど翌週から始まるNHKの同時再送信のアプリを見せ、番組配信の進化を示したうえで、「テレビとネットがつながることでどのような未来が広がるのか。それはまさにテレビの“再定義”なのではないかと考える」と述べた。

■拡散をねらい、ハッシュタグを番組名に
 次にパネリストが自身の活動を説明。下川氏は番組のデジタル連動企画に携わってきた経歴を紹介し、最近の事例として90分番組の中に長短合わせて22のコンテンツを展開する「#ハイ_ボール」を見せた。神原氏は制作局で多様な番組に携わったあと、現在はNHKスペシャル「私たちのこれから」という市民討論番組を制作している。「#雇用激変」「#超少子化」などハッシュタグを番組名にしてネットでの拡散を狙った。岸氏は日本テレビからHAROiDに出向。「テレビを演出装置にしたイベントづくり」を常に念頭に置き、最近ではKIRIN氷結の視聴者参加型CM「絶対押すなよ」などを企画している。

 ここからディスカッションに入ったのだが、非常に濃密な議論が展開された。できるだけそのエッセンスを感じてもらえるよう、印象的なやりとりをピックアップして掲載したい。

■「テレビのポジショニングを変えたい」
 倉又氏の「テレビがネットとつながって実現したいことは?」との問いかけに対し、岸氏の「テレビのポジショニングを変えたい。テレビが主役でいいのかとの思いがある」という答えが面白かった。岸氏の発想には一貫して、テレビとWEB、そしてイベントまで含めた“体験“を重視する姿勢があった。

■番組後にも議論が巻き起こる
 また倉又氏が「NHKスペシャルでハッシュタグを番組名に入れて変わったことは?」と聞くと、神原氏は「twitterで勝手に議論が巻き起こる。番組後に議論を見てもらうことも可能だ。そして視聴者が前のめりになったと思う」と答えていた。神原氏はテレビにインタラクティブ性を持ち込もうとしており、そのためにネットをどう活用するかが念頭にあるようだった。

■月への「3段ロケット」
 倉又氏が途中で見せたスライドが面白かった。ロケットを見せながら「3段ロケットじゃないと月に行けない。見逃し配信が1段目、同時再送信が2段目で、3段目が何かを考える時だと思う。そんな中、中身をどう変えねばならないのだろうか」と問いかけた。これに対し下川氏は「自分としては、3段ロケットは並列で、コンテンツによると思う。ネットで番組を作る文法がようやくできてきたので、カテゴライズを変えていかねばならない」と答えた。下川氏はビジネス的視点も強く意識しており、マネタイズの手法も含めてテレビを多面的にとらえようとしているようだった。

■番組を「解体」することで新たな価値を生み出す
 また面白い議論として、テレビ番組の新しいあり方について三人が近いことを言う場面があった。岸氏が「映像を主軸に考えるよりメタや字幕に細分化し、テレビ局だけではなく使いたい人が使うAPIのようになれば広がっていくと思う」と言ったのに対し、神原は「番組にどう出会わせられるか。『あさイチ』で有働アナが言ったことがその日の昼にネットで記事になっている。それをスポーツ紙ではなく、われわれが書くことで出会わせることが可能になるはずだ」と発言し、下川氏も「番組を構成するものを因数分解したうえで、これは音楽配信に回そうとか衣装をファッションショーに出そうとか、そういった展開もできそうだ」と述べた。いずれも、番組を解体することで別の価値が生まれることを訴えていたと思う。

■「テレビは路上ライブ」。ふと出会うもの
 最後に倉又氏が「“それってテレビなの?”で再定義するとしたら」と難しい質問をしたところ、下川氏は「これからは、キャッチアップもサイマルもすべてテレビだと思う。イギリスではすでに、テレビ=生で見る、ネットで見る、キャッチアップで見る、すべてがテレビになっている」、神原氏は「テレビは路上ライブだと思う。コンサートは強い目的意識で見に行くが、路上ライブはふと出会うもの。熱のある路上ライブを続けることと、その熱を再び伝えることが大事だと思う」、岸氏は「100人が100人わかりやすいものをめざすのがテレビ。WEBでは100人のうちひとりが悶絶するコンテンツもあっていい。そしてそういうテレビをやるのもありではないか」と答え、三者三様の考え方が面白かった。

 非常にエッジの立った意見が飛び交う、刺激的な議論が展開されるセッションだった。客席も立ち見が出るほどで注目も集めていたようだ。テレビのこれからを考えるうえで、大いに参考になったと思う。

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