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2017.2.10 UP

【INTER BEE CONNECTED セッション報告(7)】「ライツホルダーから見た番組マルチユース」放送通信融合の時代にふさわしい権利処理について初めての権利者側の議論

NexTone代表の荒川氏は、音楽著作権の複雑さを解説
NexTone代表の荒川氏は、音楽著作権の複雑さを解説
配信での映像製作に関する権利処理についての問題提起もなされた
配信での映像製作に関する権利処理についての問題提起もなされた
日本ならではのモデルが構築できる可能性も
日本ならではのモデルが構築できる可能性も

 INTER BEE CONNECTED企画セッション、二日目四番目のセッションは「ライツホルダーから見た番組マルチユース」。放送と通信の融合が進んでいく中、どうしても避けて通れないのが権利処理の問題だ。だがこれまで、あまり表舞台では議論されてこなかったのではないだろうか。このセッションでは、日本音楽事業者協会(いわゆる音事協)専務理事・中井秀範氏、NexTone代表取締役COO・荒川祐二氏をパネリストに、シンエイ動画取締役・入江武彦氏のモデレーションで、ライツホルダーの立場から新時代の権利処理について議論が展開された。なかなか直に聞くことのできない意見や見解に、じっくり耳を傾けることのできる貴重な機会となった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

■コンテンツ露出の管理・調整の重要性
 まずモデレーターの入江氏が、このセッションの位置づけを説明した。そのうえで、テレビ朝日の著作権部長を経てシンエイ動画の取締役を務めている経験から、コンテンツホルダー側の考えを提示した。視聴機会が増えることには期待があるが、ある程度戦略的に出し先を考えて、露出を管理していく必要があるとの見解だった。
 これを受けて、吉本興業で長らくマネージャーを務めたのち音事協の理事となった中井氏が、その経験もふまえて考えを述べた。新曲が出た時は、CDセールスのためにどんどん露出するが、漫才や落語の場合はネタが消耗するので野放図に出していくわけにはいかない。コンテンツによって露出を調整する必要があるからこそ、許諾権を重視するのが音事協の立場だと言う。

■利用機会増大への課題
 一方、音楽の新しい著作権管理事業者であるNexTone代表の荒川氏は、音楽著作権の複雑さを解説した。演奏権、録音権、出版権とある中でNexToneは演奏権は扱っていない。例えば今年ヒットしたRADWIMPSの「前前前世」は放送番組での使用はJASRAC、その番組がネット配信された場合はNexToneが担当するのだという。楽曲を利用する側にとっては一括で申請する方が便利なのだろうが、そういう対応はできていないのが課題だと述べた。中井氏の言う「露出の管理」とは別に、使ってもらう機会を増やすにはどうすべきか、というテーマも提示した。

■コンテンツ配信における権利処理の課題
 ここであらためて中井氏がスライドでプレゼンテーション。CDやDVDなどのパッケージが売れなくなっており、放送局も配信をはじめているがまだまだ十分に収益化できていない現状を概観。著作権法では放送の実演に録音録画は含まないのに対し、映画の場合は二次利用で収益を確保するモデルなのでワンチャンスで権利処理ができる。このところ配信での映像製作が増えており、放送ではないので映画同様ワンチャンスでの契約となっているが、配信コンテンツは多様に二次三次利用がなされ放送されることもある。それなのに、果たしてそれでいいのかと問題提議がなされた。もう一度仕組みを作り直そう、それがお互いにコンテンツ価値を最大化することではないかと提言した。

■日本特有の音楽市場状況
 一方、荒川氏は音楽業界の状況をスライドで解説。世界の音楽業界では着実にフィジカル(CDなど)が減少し、デジタル(配信)がそれを凌駕しつつある。ところが日本では音楽ソフト(CD、DVDなど)が75%を占めるのに配信はさほど伸びていない状況で、独自の国内マーケットが功を奏しているかもしれない。また音楽ソフトの中でDVDなど映像の割合は増えている。そしてRadikoのタイムシフトには一定の制限がある。こうした事例を参考にすれば、日本ならではのモデルが構築できる可能性があると述べた。

■進むデータベースの統合
 最後のテーマとして入江氏からメタデータの管理について二人に投げかけた。中井氏は、映像コンテンツでは実演家の窓口は映像コンテンツ権利処理機構(aRma)に統一できており、権利交渉のワンストップ化に成功していると説明。荒川氏は音楽業界でも統合データベース構想が進んでおり、NexToneとJSRACとの協議もはじまって互いのサーバーを接続ことも検討がはじまっていると述べた。メタデータの集積は今後非常に重要になりそうだ。

 最後に入江氏が、著作権の議論は誰か一人が勝つものではない。ともに手を携えて歩んでいきたいと締めた。権利者同士の非常に有意義な議論が展開され、それぞれの前向きな意志が確認できたセッションだった。

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