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2017.2.2 UP

【INITER BEE CONNECTED セッション報告】(2)「新しい視聴計測はテレビをどう変えるか」メディア調査会社三社が視聴計測の最新動向を熱く議論

ビデオリサーチは10月からタイムシフト視聴率も含めた「総合視聴率」の計測をスタート
ビデオリサーチは10月からタイムシフト視聴率も含めた「総合視聴率」の計測をスタート
アメリカでのトータルオーディエンス計測は2017年3月から公開予定
アメリカでのトータルオーディエンス計測は2017年3月から公開予定
視聴ログは、圧倒的にデータ量が大きく、これまでにない多様な分析も可能
視聴ログは、圧倒的にデータ量が大きく、これまでにない多様な分析も可能
全番組の25%程度が録画視聴の対象になっており、ドラマ、映画、アニメ、子ども向け番組が多いという
全番組の25%程度が録画視聴の対象になっており、ドラマ、映画、アニメ、子ども向け番組が多いという

 Inter BEE 2016の会期中に開催したINTER BEE CONNECTED企画セッション、初日二つ目は「新しい視聴計測はテレビをどう変えるか」(2016年11月18日開催)。
 テレビ視聴はいまや、リアルタイムで見られるだけではない。録画で見たり、ネットで視聴したり多様に広がっている。この10月からタイムシフト視聴率の調査がはじまったが、それはひとつのステップに過ぎず、視聴計測に様々なプレイヤーが多様な手法で取り組んでいる。その主要な3社からパネリストを招いたのがこのセッションだ。ビデオリサーチのソリューション推進局長・新妻真氏、ニールセンのエグゼクティブアナリスト・中村義哉氏、そしてインテージ執行役員・長崎貴裕氏が登壇。メディアコンサルタント境治氏がモデレーター役を務めた。

■視聴形態にあわせて進化する視聴計測
 最初に境氏が、テレビの視聴計測をとりまく状況について簡単に解説したあと、それぞれのショートプレゼンが行われた。
 まず新妻氏がビデオリサーチの新しい視聴計測を説明した。10月からタイムシフト視聴率も含めた「総合視聴率」の計測をスタート。タイムシフト視聴率が高いのはドラマが多く、若者層もかなりいる。またスマートフォンでの視聴もシングルソースでの調査を「VR CUBIC」の名称でサービスを開始しているという。さらに、テレビ視聴とデジタルのデータを統合することで新たに見えてくることにも取り組んでいるとのことだった。
 次に中村氏がアメリカでのトータルオーディエンス計測についてプレゼンした。2017年3月から公開される予定で、テレビ番組視聴率、テレビ広告視聴率、デジタルコンテンツ視聴率、デジタル広告視聴率の4つで構成される。プラットフォーム横断で、統一の指標で比較ができるという。この計測を利用すれば、テレビ局がテレビ視聴とネット配信をセットでセールスすることも可能になるそうだ。
 長崎氏はまず、アメリカの業界イベントでの一コマを紹介。調査手法について喧々諤々の議論が交わされ、とくにパネルかセンサスかが鍵となっていたそうだ。インテージ社ではパネル調査としてシングルソースパネルと、センサス調査としてスマートテレビの視聴ログデータを扱っているという。シングルソースパネルi-SSPを使えば、ある日ある人のメディア行動がひと通り把握できる。また視聴ログは、圧倒的にデータ量が大きく細かい粒度で見られるので、これまでにない多様な分析も可能になってきたという。

■ドラマ、映画、アニメなどに多い録画視聴
 後半は、ディスカッション。まず、ホットな話題として録画視聴データから何がわかるかを新妻氏が解説。「全番組の25%程度が録画視聴の対象になっており、ドラマ、映画、アニメ、子ども向け番組が多いことがわかった」という。これについて長崎氏は、「インテージでも録画視聴のデータをとっているので、こうして公式な視聴率の形で出てくるのはとてもいいこと」と述べた。中村氏は、「アメリカの状況と比べても似ているようだ」と発言。「ただ、SVODが普及している分、そちらの数値がタイムシフト視聴として急伸している」という。

■課題の多いトータルな視聴計測
 次に、トータルオーディエンス計測の課題を議論した。中村氏は、「デジタル側は個人の視聴だが、現状のカレンシーとしては世帯視聴率。その統合をどうするかが課題ではないか」と述べた。長崎氏は、「インテージでは個人ベースで計測しているものの、デバイスが広がって変化も大きいので把握が難しい。同時再送信も出てくるとどう計測するかなど、さらに細分化が進む」とトータルな計測の困難がますます高まることを課題として挙げた。新妻氏は、「ビデオリサーチの視聴率調査は世帯ベースだが、個々人でボタンを押す調査なので世帯を測りつつ個人も把握している。今後は、ビッグデータをどう個人に集約するかという問題が出てくるはずだ」と指摘した。

■ネット視聴でも高いテレビの効果
 最後に、「言っておきたいこと」を各パネリストが話した。新妻氏は、「テレビの価値を示すためにこれからもがんばる。デジタル化による生活者とメディアの関係変化を正しくとらえてデータの整備に取り組む」と視聴率を担う責任を示した。中村氏は、「これからは、ノン・ゼロサムゲーム。誰かが伸びればだれかが縮む時代ではもうないので、デジタルをしっかり把握できれば市場はふくらむ」と明るいビジョンを述べた。長崎氏は「テレビとネットの分析をやってみて、テレビの効果が強いことが見えてきた。データを測られることは怖くなくてむしろ価値が高まると考えて欲しい」と、放送界に自らの分析を促した。

■「分析力」を身につける時代
 これまではリアルタイムの世帯視聴率をベースに放送界は歩んできたが、複雑な時代だからこそ、多様なデータを駆使する必要が出てきている。自らの価値を高めるために、メディアは分析力を身につけるべき時代になっていることを、力強く感じさせてくれたセッションだった。

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