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2015.1.22 UP

【コラム】CESにおけるテレビ展示の動向から2015年の日本のテレビの行方をひもとく

パナソニックの色拡張の考え方の説明図
パナソニックの色拡張の考え方の説明図
ソニーとシャープはAndroid TV。写真はソニーのもの。両者設定が異なるのでUIなどもかなり異なるものになっている
ソニーとシャープはAndroid TV。写真はソニーのもの。両者設定が異なるのでUIなどもかなり異なるものになっている
ソニーのプレスカンファレンスでPlayStation Vue について報告する平井CEO
ソニーのプレスカンファレンスでPlayStation Vue について報告する平井CEO
画面イメージ。会場には実機がないので実際の所なにもわからないまま
画面イメージ。会場には実機がないので実際の所なにもわからないまま

 米ラスベガスで開催したInternational CES 2015。江口靖二事務所代表で、デジタルサイネージコンソーシアム常務理事の江口靖二氏が、会場における4Kテレビ、スマートテレビの展示を取材した。江口氏は、「2つの新しい動き」として、「HDRや色空間などの拡張」と「スマートテレビを想定した各社のテレビへのOS搭載の加速」を挙げている。さらにCESにおける二つの傾向から、日本のテレビの行方について展望している。(編集部)
(上写真=Firefox OSを採用したパナソニックのテレビ画面)

■新たな二つの動き
 CESは全米の家電ショーであるわけだが、この10年位はテレビが話題の中心だった。ちょうどアナログからデジタルに向かうタイミングであり、またフラットパネルの開発競争がすさまじい時期であった。日本と韓国のメーカーが世界最大を競いあった。その後、デジタル化が一巡すると、テレビメーカーは訴求ポイントを失い、3Dテレビで急場を凌ごうとしたが、やはり市場が踊ることはなかった。その後の話題の中心がスマートテレビと4Kだ。4Kに関しては、白黒、カラー、ステレオ、HDといった正常進化の過程なので、疑う余地はなく、価格の低下とともに普及は自然に進んでいく。こうした4Kディスプレイに対して、4Kコンテンツを電波の放送が提供するのか、インターネットなのか、あるいはBlu-rayなのかが、現在混沌としているところだ。
 一方、スマートテレビは結局のところYouTube、Netflix、Huluというコンテンツ提供元が増えたことで、乱暴に思われるかもしれないが、これらをテレビで見られるためのものと限りなく同義、ということで事実上落ち着いてしまった。これまでが2014年までのテレビ周辺の変遷だと思う。
 そして2015年。CESではテレビに関しては2つの新しい動きが見られた。一つ目はさらなる技術の進化の延長上としての話で、HDRや色空間の拡張などの技術だ。これまでのテレビの進化の歴史から見ると、正直コンシューマー側から見ればインパクトには欠けるが、より美しい映像を表示するための新たな課題設定である。ただしこれらは、どれもテレビのビジネスモデルには原則影響する話ではない。あくまでも絵が綺麗になるという一点であり、そしてそれは言うまでもなく非常に重要な事ではある。

■軽くなったテレビ搭載OS
 もう一つが、スマートテレビにかかる開発コストを下げ、同時にテレビのOSを軽くして、放送とネットコンテンツをサクサクと自然な操作感で扱えるようにしようという動きだ。Android TVやFirefox OS、WebOS、そしてTizenなどをテレビのOSとして搭載する動きである。これらは重要な事であるが、とりわけ日本においては前述のYouTube、Netflix、Huluを誰もが積極的にテレビで見ようという状況にはなっていない。アメリカのNetflixの契約者数は3700万である。テレビや放送を取り巻く構造、ケーブルテレビや衛星放送などで有料でテレビを視聴するという行為そのものが、日米では異なるのはいまさら言うまでもないことだ。
 恐らく日本では、Netfixが上陸してきたとしても、有料でテレビを見るという方向性にはそう簡単には向かうことはない。ケーブルテレビ、スカパー!、WOWOWの有料契約者数の推移を見れば、今後何かのトリガーで大きく増加に転じるとは考えにくい。
 昨年のCESのソニーのキーノートで衝撃的に発表されたのがPlayStation Vueである。PlayStationをハブに、全米のテレビがリアルタイム、タイムシフト、プレイスシフトで見られるというものだ。そしてキーノートでの公約通り、昨年末から試験運用がスタートした。今年のCESではこれがデモされるだろうと期待したのだが、プレスカンファレンスで前述のことが触れられただけで、実際のデモを見ることが出来なかった。これはこれで不思議というか残念というべきなのだろうか。やはり全て順調というわけではないというのが感じられる出来事だ。

■視聴率に基づいた無料広告放送モデル
 もともとのスマートテレビの定義はともかく、結果的には上記のようになったスマートテレビは、日本ではこのままではあまり普及しない、いやテレビを購入すれは標準装備であるので数は伸びるが、使われることはそれほど多くはないだろう。「アクトビラに」似ていると思えばいい。また国を上げてスマートテレビの標準化を進めてきた日本のハイブリッドキャストも、国からの支援が継続されなくなれば、じきに力尽きるだろう。
 では日本でスマートテレビ、いやスマートなテレビ、多くの人々が期待しているテレビ、あるいはテレビのサービスとは何か。それはいつでもどこでもテレビということ。タイムシフトにプレイスシフト。多分これに尽きるのだろう。
 ここにきて、リアルタイム視聴をベースとした視聴率に基づいた無料広告放送モデルが前提になってきた。ここに何らかの手を入れざるをえないだろう。その方法は複数あるので、試行錯誤と既存のビジネスモデルとのカニバリズムを起こさないポイントが何処なのかを検討していくしかない。理屈で考えても多分最適な解はわからないだろう。
 やってみるしかない。インターネットもハードウエアも要素はすでに全部整っている。あとは地上波ビジネスを最大化させるのは何なのかという点だけだ。かつてVHSデッキは日本で一番良く売れた。しかしこれはテレビ局のビジネスに直接的に何の貢献もすることはなかった。ハードディスクレコーダーもしかりである。こうした仕組みをテレビ局側が主体となって動かすこと無くして、事業の拡大は困難なのではないだろうか。昨年末の民放連会長の見逃し視聴に関する発言以降、地上波テレビの動きから目が離せない状態が続いている。
(江口靖二事務所代表/デジタルサイネージコンソーシアム常務理事/デジタルメディアコンサルタント 江口靖二)

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