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ジャーナリストの木村太郎氏は、仕事でのかかわりは無論のこと、個人的にも「音」と「映像」と「通信」には並々ならぬ興味をお持ちだ。今年はInter BEEニュースセンターでスーパーバイザーをお願いしているご縁もあって、Inter BEE開催に先立ち、ジャーナリストとして、そして一人の放送、映像ファンとしての立場からInter BEEとかかわりの深いお二人と対談をしていただいた。この対談を通じてInter BEEの何が見えてくるだろうか。
2007.9.28
スペシャル対談 音響編 木村太郎 VS 沢口真生

その2
来るべきサラウンドの時代に、制作側は十分に環境を整備している。普及に求められるのは各分野の意識改革だという。
- 【木村】
- ニュース報道の場合、5.1をどう活用すればいいのでしょう。
- 【沢口】
- ニュースでも十分に使えると思いますが、ニュースの場合に問題なのは迅速性や回線の問題、つまり、どうやって現場から素材を飛ばせるのかなどです。このハードウェアの制約が解決すればリアルな報道につながると思います。
- 【木村】
- 台風中継などやるとすごい、映画以上かもしれませんね。さて、これからいろいろ研究せねばならないでしょうが、現場の方々の意識は変わるでしょうか?
- 【沢口】
- いくつかの段階を経ると思いますが、第1ステップは製作者の意識です。従来のステレオではなくサラウンドでやって、どのようにしていいものを創れるかというミキシングエンジニアの意識です。その次のステップは経営者です。経営者の視点は製作者とは異なり、企業体がどのように利益を生み出し営業できるかに判断の基準をおきます。それがステレオだろうがサラウンドだろうがモノラルだろうが、収益が増えればいいわけです。経営者がサラウンドにしてメリットがあると考えるようにするのが第2ステップです。第3ステップは横をつなぐこと。制作側や経営側の意識を高めるだけではなく、最終的にエンドユーザーがお茶の間で楽しめるということです。
- 【木村】
- 今のテレビの副調整室を見ると、映像関係が95%くらいのスペースを占め、音声が5%くらいでしょうか。しかし、今後は音声の仕事が多くなってくるのではないでしょうか?
- 【沢口】
- 何を作るかにもよるのでしょうが、スタジオ制作の場合だったらすでに多くの放送局がデジタル化を機に、機材の更新を進めており、音声周りはサラウンドという環境を構築しています。制作側は問題ない状況です。
- 【木村】
- いい音が取れるために、いい音があるために、状況が変わってくるということはある。つまり、いい音のために場面を選んでいくように、今後はなるかもしれない。
- 【沢口】
- そこは製作者のセンスですね。これまではいい絵柄になる場所を優先していたのが、それに加えていい音のする場所を選ぶようになる。そうなればクォリティが高まると思います。
- 【木村】
- お話を伺っていると、サラウンドはコマーシャルがもっとも効果的なように思うのですがいかがでしょうか。
- 【沢口】
- おっしゃるとおりです。実は今年のInter BEEの音響部門シンポジウムのテーマは「コマーシャル制作とサラウンド」です。日本の場合、広告業界にサラウンドを活用しようとの意識がまだ芽生えていないのでこのテーマを取り上げました。一方、アメリカの場合、CMの40~50%はサラウンドで音を作っています。アメリカのCM業界の人たちにとってサラウンドに違和感はない。ヨーロッパでは5~8%で日本は皆無といった状況です。アメリカの場合、ホームシアターというユーザー側のインフラが整っているという背景があります。
- 【木村】
- サラウンドを使ったCMってどんなモノでしょうね。
- 【沢口】
- 映画のダイジェスト版のような感じの作品が多い。15秒や30秒の凝縮された時間に音を効果的に入れ込めて、インパクトがあると思います。
- 【木村】
- 日本でもそうなるには、広告代理店の意識改革が必要になってくるのでしょうか。
- 【沢口】
- 代理店もそうですが、CMの場合は企業側の意識ですね。スポンサーとして最もお金を持っている方に意識していただく。そして製作者もです。スタジオ側はいつでも対応可能な状態です。
- 【木村】
- おっしゃった中にクリエーターが入ってなかったのですが、クリエーターが代理店やスポンサーに、サラウンドを活用するとこうなるよといった提案をしていくのが大切だと思います。クリエーターの人たちに音を使うという意識が今はあまりないのかもしれませんね。
- 【沢口】
- ナレーションとちょっとした効果音、音楽があれば成り立つというルーティンワークに陥っているかもしれません。音を360度で表現して、クライアントの望むCMにどのようにするかということですね。
- 【木村】
- 20秒CMってすごく面白いものができそうですね。さて、そのCMを見る側もサラウンド環境が整っていなければならない。ホームシアターっていうのはまだまだ普及していないのでしょうか。日本の住環境が問題なのでしょうか。
- 【沢口】
- それもあるのでしょうが、サラウンドを体験する場が少ないのが問題でしょう。たとえば、家電量販店にもちゃんとサラウンドを体験する場がない。だから、サラウンドの良さをユーザーが知らない。体験すると、それが嫌だという人はいらっしゃらない。
- 【木村】
- コンテンツはどういう状況でしょうか? 楽しめるものは揃っているのでしょうか?
- 【沢口】
- 2006年にサラウンド放送はおよそ1400本です。2000年はたった1本でした(笑)。そういう意味では急激に伸びています。(その3に続く)
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著者プロフィール 木村 太郎 ジャーナリスト 1938年、合衆国カリフォルニア州バークレイ市生まれ。41年、日米関係悪化とともに帰国。64年、慶応義塾大学法学部卒業、NHKに入社。記者として 神戸放送局、報道局社会部に勤務する。74年からベイルート、ジュネーブ、ワシントンの特派員を歴任。82年2月に帰国し、「ニュースセンター9時」の キャスターを6年間務める。88年、「ニュースセンター9時」終了とともにNHKを退社、木村太郎事務所を開設しフリーランス記者として新しいスタートを 切る。90年からFNN「ニュースCOM」でキャスターを、94年からFNN「ニュースJAPAN」、2000年からFNN「スーパーニュース」でニュー ス・アナリストを務める。86年「第12回放送文化基金賞」受賞、88年には、国際報道を通じ、国際理解に貢献したジャーナリストに与えられる「1987 年ボーン上田記念国際記者賞」を受賞。 |
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著者プロフィール 沢口 真生 パイオニア株式会社 研究開発本部 オーディオ推進部顧問
専門分野は、ドラマのサウンドデザイン、特に1985年以降は、デジタル時代を見据えたマルチチャンネル・サラウンド音声のスタジオ設計とソフト開発に従事。1987年よりDOLBY SURRONDによるFMドラマ 1992年からは3−2サラウンドのHD-TVドラマなどでサラウンド制作のソフト開発と普及啓蒙にむけた制作ガイドライン策定や次世代オーディオ調査活動に従事。近年はInter BEE国際シンポジウム音響部門の企画運営、JPPA -AWARDミキシング部門審査委員、AES日本支部理事、JAS 理事、AES 技術委員会スタジオセクションの共同議長を担当。 2002年AESよりサラウンド音響への貢献でフェローシップ授賞、2003年にはヨーロッパIBSより同趣旨でフェローを授賞。2004年ABUより 2004年度最優秀論文賞受賞。2005年JASより音の日10周年記念として永年のサラウンド活動に対し「音の匠」を顕彰。
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