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ジャーナリストの木村太郎氏は、仕事でのかかわりは無論のこと、個人的にも「音」と「映像」と「通信」には並々ならぬ興味をお持ちだ。今年はInter BEEニュースセンターでスーパーバイザーをお願いしているご縁もあって、Inter BEE開催に先立ち、ジャーナリストとして、そして一人の放送、映像ファンとしての立場からInter BEEとかかわりの深いお二人と対談をしていただいた。この対談を通じてInter BEEの何が見えてくるだろうか。
2007.8.10
スペシャル対談 映像編 木村太郎 VS 為ケ谷秀一

その1
木村氏は「発明が必要の母」と言う。対し、為ケ谷氏は「技術は常に進化を追い求めます」と言う。映像における新しい技術は、何を生み出そうとするのか。
- 【木村】
- 私が、最初にハイビジョンを見たのは70年ごろ、NHKの技研を取材に行った時でした。そこで初めて横長のテレビを見て、「これからテレビは、シネマスコープになる」と記事を書いた事があります。あれがHDTVだったわけですね。
- 【為ケ谷】
- 当時は高品位テレビと言っていましたね。
- 【木村】
- そのHDTVが、家庭用のカメラにまで進出していますが、使いこなせているのでしょうか。
- 【為ケ谷】
- その頃は、圧縮技術を使わないピュアなハイビジョンでした。問題は、ディスプレイの性能が追随しておらず、映像は奇麗だが画面は暗いと言われていました。その後ディスプレイが進化し、それに伴いカメラも進化してきた。映像は素晴らしいが、それをどう再現するかについても課題があるのですが、最近はデジタル技術が進化して、ハイビジョンが元来持っているクオリティを伝える方法ができ、それが発展して映画にまで進んでいる。こう言う原理に基づいた特性を活かすと同時に、一方ではコンシューマーの利用を広げるための小型化、圧縮技術の開発等が進んでいる。昔と比べると、ハイビジョンが普通のメディアになってきています。
- 【木村】
- そのいろんな技術が従来の525NTSCの世界にも使われており、525自体がハイビジョンが必要ないのではないかというほどきれいになっている。考えるに、ハイビジョンはクオリティはもちろんですが、使い方が問われているのではないかと思う。16対9の画面を見ていると、4対3と同じように使うのは間違いではないかと考えるのですが。
- 【為ケ谷】
- 重要なファクターは、アスペクトの違いと解像度の違いです。これをどう活かすかで、それぞれのメディアの使い方が変わると思う。ハイビジョンも従来の525テレビもデジタル化されているので、画面が小さいとそう違わないじゃないかと言われる。一方で、画素数の多いハイビジョンは大きくすることで差別化ができる。最近のディスプレイは大型化してきているので、そこで歴然と違いが見えてくる。この解像度の大きさをどう使うのかが、クリエイターの大切なセンスになってくる。
- 【木村】
- 野球などの中継を40、50インチのモニターで見ていると、そんなに寄らないでくれと言いたくなる(笑)。汗かいた顔のアップなんか見たくない、グラウンドを自由に目で追いたいと思うのですが、その辺のところが製作者側に問われてくるのかなと思います。
- 【為ケ谷】
- そのとおりだと思います。
- 【木村】
- 放送の世界は「必要が発明の母」ではなく「発明が必要の母」だと思います。何時も新しい技術に尻を叩かれ、この技術をどう利用するんだ、と言われ続けてきました。鮮明に覚えているのは、1964年の東京オリンピックで、NHKがカラー化し、ニュースもカラーになった時のこと。その時、報道局長から各地方局に「カラー化に伴い、これを考慮して取材されたし」と来たんですね。みんな困りましてね、しばらくは花のアップや新種のバラができましたなどのニュースが増えた(笑)。カラー化したニュースとは何かが分からなかった。新しい技術を活用する方法をいつも後から考えねばならないという脅迫観念みたいなものがずっとあった。新しい技術を作られる側はいかがでしょうか。
- 【為ケ谷】
- 技術は、常に進化を追い求めていますが、ただ作って終わりという訳ではなく、新しい技術を番組で如何に使っていくかを、使う側と一緒に研究、開発せねばならない。プロデューサーやディレクターがこういう風にやりたいと言われた時、先ずできないねとは言わず、何とかやってみようと考え、そこから新しい技術を生み出すことができる。
- 【木村】
- さて、今回のInter BEEで、新しいハードウエアの何に注目すればいいでしょうか?
- 【為ケ谷】
- ユーザーが使いやすい方向にどのように進化していくのかがひとつのテーマですね。たとえば、最近の技術では、グラフィックスをリアルタイムに処理できる。CGもリアルタイムに発生させることができる。いい例としてはバーチャルスタジオ、電子セットですね。この場合、電子セットとなるCGは、テレビカメラの映像と同じように、毎秒30コマ数を発生しないと、カメラのライブの映像とマッチングしない。この裏には、リアルタイムで画像を処理する技術が必要となる。CGだけではなく、画像も一回コンピュータで処理をしてリアルタイムに吐き出すことができるようになる。ただ、これを使って何を作っていくかを一緒に考えようというのがInter BEEの重要なところですね。今回のInter BEEで行う映像セッションでは、機材の説明をするだけではなくて、もっといい使われ方や必要なことがないかをディレクターやプロデューサーなど、番組を作る側の方にも考えていただき、提案していただきたい。そうなるとInter BEEが単なる機器展示会というだけではなく、そこから将来を見据えた議論が生まれてくる場となって行くと思います。
- 【木村】
- ニュースを報道する側として使い方を考えると、たとえば8月の参議院選挙の時、遠方の方と対談したいとなる。そこで電子スタジオを使って、現地から参加していただく。あたかもここに座ってらっしゃるように見える。そんなことができるわけですね。
- 【為ケ谷】
- 2つの映像をリアルタイムに合成するわけですね。演出の仕方を広げることができる、リアルタイム画像システムの新しい使い方でできる時代になっています。バーチャルスタジオはCGをリアルタイムに出だせる機能を組み合わせる技術であり、一つの技術というよりも、基本的な技術を何かと組み合わせると、新しいことができるのか、と言う演出の手法の開発も大事ですね。(その2に続く)
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著者プロフィール 木村 太郎 ジャーナリスト 1938年、合衆国カリフォルニア州バークレイ市生まれ。41年、日米関係悪化とともに帰国。64年、慶応義塾大学法学部卒業、NHKに入社。記者として 神戸放送局、報道局社会部に勤務する。74年からベイルート、ジュネーブ、ワシントンの特派員を歴任。82年2月に帰国し、「ニュースセンター9時」の キャスターを6年間務める。88年、「ニュースセンター9時」終了とともにNHKを退社、木村太郎事務所を開設しフリーランス記者として新しいスタートを 切る。90年からFNN「ニュースCOM」でキャスターを、94年からFNN「ニュースJAPAN」、2000年からFNN「スーパーニュース」でニュー ス・アナリストを務める。86年「第12回放送文化基金賞」受賞、88年には、国際報道を通じ、国際理解に貢献したジャーナリストに与えられる「1987 年ボーン上田記念国際記者賞」を受賞。 |
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著者プロフィール 為ケ谷 秀一 女子美術大学・大学院美術研究科(デザイン専攻:メディアアート造形)
1981年頃より放送番組へのコンピュータグラフィックス(CG)技術の導入を進め、システムの開発、放送番組への応用などに取り組む。多くの先駆的な番組制作を通してCGシステム等の開発を進めてきた。また、ハイビジョンとデジタル技術を統合した「エレクトロニック・パレット」と呼ばれる新しい制作手法の概念を構築し、ハリウッドをはじめ世界の映画界に情報を発信してきた。 1991年より、(株)国際メディア・コーポレーション(MICO)において、NHKを中心とした海外でのハイビジョン番組制作の支援、国内、海外におけるハイビジョンおよびCG技術、マルチメディアなどに対する技術コンサルティング等にあたる。1998年、世界で初めてスペ-スシャトルへのハイビジョンカメラの搭載を実現させた。総務省、経済産業省、文部科学省等の研究委員会、審査委員会委員などを歴任し、デジタルコンテンツ産業の振興事業に取り組む。
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