【Inter BEE 2009 見どころピックアップ!】タックシステムズ NTTとNTTラーニングシステムズが開発した2ch音源を5.1chサラウンド化する音楽ソース制作ソフトを参考出品

2009.11.18 UP

開発中のNML RevCon-RS外観イメージ
発表会のもよう

発表会のもよう

残響についての説明図

残響についての説明図

Revtrina技術を用いたサラウンド再生用音源の生成

Revtrina技術を用いたサラウンド再生用音源の生成

 日本電信電話株式会社(以下:NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦惺)は、音楽CDなどに収録されているモノラル音源やステレオ音源の音の特徴を分析して、そこに含まれる残響成分を分離し、分離した残響成分を低減・強調するなど自由に制御することで、既存のモノラル音源やステレオ音源から臨場感ある5.1チャンネルサラウンド化する技術「Revtrina」を開発した。
 また、この技術をもとにしたプロの音響技術者向けのサラウンド音楽ソース制作ソフトウェア「NML RevCon-RS」をNTTラーニングシステムズが商品化、2009年11月17日、都内で発表会を開催した。

 NTTラーニングシステムズでは「NML RevCon-RS」をInterBEE 2009のタックシステムブースで参考出品する予定である。

<<既存のモノラルまたはステレオ音源から残響音成分を分離・制御して5.1chサラウンド化>>

 NTTコミュニケーション科学基礎研究所が開発した「Revtrina」技術は、昨年開発した収録音声から残響を取り除く残響除去技術を音楽への残響制御適用とサラウンド再生へと発展させた技術だ。
 収録条件によらず収録した音に含まれる話者や楽器から直接マイクに届く直接音成分と壁や天井や床で反射された上でマイクに届く残響成分を推定して分離。分離した直接音成分と残響音成分を実現したい効果にあわせて低減・強調など操作することにより、サラウンド感の高いソースを作ることができる技術である。


<<2本のマイク収録からサラウンドを再現>>

 現在流通している音楽CDなどは、2チャンネルのステレオで収録されている。例えば、コンサートホールにおいて2本のマイクで収録された音源には、直接音成分と残響成分の2つが同時に収録されている。この音源を通常のステレオ再生した場合、リスナーの前に置いた2本のスピーカから出る音には直接音と残響音の両方の混ざった音が含まれている。つまり、通常のステレオ再生では、音楽ホールなどで体感するサラウンド感は得られない。

 今回開発した技術は、「既存のモノラルまたはステレオ音源から直接音成分と残響音成分を分離し、直接音をリスナーの前のスピーカーから、残響音成分を主に横や後ろのスピーカーから出すことで、音楽ホールの客席で聴いているような自然な響き、サラウンド空間を実現できる」とNTTコミュニケーション科学基礎研究所メディア情報研究部部長の中沢憲二氏は説明した。

 また、現在代表的なサラウンド化技術との違いについて、中沢憲二氏は「主に、元の音楽に人工的な残響を付加し、周囲のスピーカーから再生する事でサラウンド感を出す方法と、左右の耳に聞こえる音の相関が低いほど、空間の広がりを感じるという人間の聴覚の性質を利用しサラウンド感を演出する方法がある。今回の我々のサラウンド化技術は、既存の2チャンネル音源から直接音の繰り返し音である残響音成分を取り出して直接音成分と分離し、直接音成分を前から、残響音成分を周囲から出すことでサラウンドを実現している」と説明した。

<<新たな音楽や音ビジネスのルネッサンスになるものと期待>>

 NTTラーニングシステムズは、昨年秋に、収録した音声から残響を除去するプロの音響技術者向けのPro Toolsプラグインソフト「NML Revcon-RR(Reverb Rejection)」を開発し既に販売を行っている。今回NTTラーニングシステムズでは、NTTコミュニケーション科学基礎研究所が開発した「Revtrina」技術を使い、残響音成分の分離する量や分離した残響音成分の出力先チャンネル、出力量などの調整といった、音作りのプロが容易に利用できるソフト「NML Revcon-RS(Real Sorround)」を開発、Pro Toolsのプラグインソフトウェアとして商品化した。

 この製品の期待する効果について、NTTラーニングシステムズ取締役映像制作事業部長の佐藤和彦氏は、次のように説明する。

 「大きく分けて2つある。1つは、過去のアナログ音源やステレオ音源を5.1chなどの付加価値を付けた音を作る、つまり既存の資産をよみがえらせることができる」

 「2つ目が、機材や人など制作稼働高く非常に制作が大変な5.1chサラウンド収録を、従来の2chステレオ収録で後から5.1chサラウンド化ができるため、作業コストの低減が期待できる」。

 また、佐藤和彦氏は「今回開発したソフトを映像業界や音楽業界、放送業界においても、今後5.1ch化対応に適応していければと思っている。音作りの専門スキルを活かして、新たな音楽や音ビジネスのルネッサンスになるものと期待している」と語った。


<<クリエイターの意図に合わせた”臨場感”を構築可能に>>

 NTTラーニングシステムズ映像制作事業部制作技術部MAセクションの久保田敏行氏は「録音されている音源から分離した残響音成分に人工的な残響成分を加えているのではなく、元々既存の音楽に含まれている残響成分のみを利用し、直接音とともに再配置する事で、ミュージシャンやレコーディングミキサー、プロデューサーなど音楽制作者が意図して制作しただろう臨場感ある音を表現する事ができるソフトができたのではないかと思う」と制作者としての感想を語った。

 本技術の今後の展開について、NTT研究企画部門プロデュース担当の村山立人氏は、「今後もNTTコミュニケーション科学基礎研究所において、DSP(Digital Signal Processor)を用いたリアルタイムサラウンド化技術の研究を行っていく」と説明した。


<<Pro Tools用プラグインとして販売予定>>

 NTTラーニングシステムズでは、Pro Tools用Audio Suiteプラグインソフトとして平成22年4月に販売を開始する予定。価格は12万円程度を想定している。

【上から2番目の写真:発表会のもよう】
左:NTTコミュニケーション科学基礎研究所メディア情報研究部部長の中沢憲二氏、中央:NTTラーニングシステムズ株式会社取締役映像制作事業部長の佐藤和彦氏、右:NTT研究企画部門プロデュース担当の村山立人氏

発表会のもよう

発表会のもよう

残響についての説明図

残響についての説明図

Revtrina技術を用いたサラウンド再生用音源の生成

Revtrina技術を用いたサラウンド再生用音源の生成

#interbee2019

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