【NEWS】Xbox One用のSoCやKinectの性能が明らかに HotChips報告(1)

2013.9.19 UP

Xbox Oneには8コアCPUのはか、GPU、ビデオCODECなどが内蔵されている
Xbox OneのSoC構造を発表する米Microsoftのジョン・セル氏

Xbox OneのSoC構造を発表する米Microsoftのジョン・セル氏

Microsoftのパトリック・オコナー氏は新型Kinectが用いるセンシング技術を発表した

Microsoftのパトリック・オコナー氏は新型Kinectが用いるセンシング技術を発表した

 高性能プロセッサの専門学会である「Hot Chips25」(主催=IEEEコンピュータ・ソサエティ他)が8月25日から27日までの3日間、スタンフォード大学(米国カリフォルニア州)で開催された。今年は、米インテル、米AMD、米IBMの高性能プロセッサに加えて、米マイクロソフトの次世代ゲーム機「Xbox One」に搭載されるプロセッサも発表されるとあって多くの関係者が集まった。基調講演では、DARPA(国防高等研究計画局)のディレクターがムーアの法則以降の半導体研究を述べ、「ムーアの法則が終わるかどうか」ではなく、「いつ終わるか」に関心が移っていることを示していた。
(映像新聞 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)

■米クアルコムがヘキサゴンDSPの詳細を発表
 Hot Chips(以下HC)は、長らく米スタンフォード大学のメモリアル・オーディトリアムで開催されてきた。25回の歴史のうち、20回以上同じ会場だ。昨年は、メモリアル・オーディトリアム改修のため、近所のデアンザ・カレッジで開催されたが、HCといえばメモリアル・オーディトリアムというのが参加者達の認識だ。
 この学会は「実際にプロセッサを開発している人達が、アイデアを発表する場」(創設者のロバート・スチュワート博士)として作られた。細かな方式論を戦わせる研究系との学会とは異なるタイプを目指したことがうかがえる。それもあって、発表のほとんどは実用化されているプロセッサだ。
 今年は、インテル、AMD、IBM、米オラクル、米ザイリンクス、富士通といった企業から、最新のプロセッサに関する発表がなされた。また、これまであまり内容を公開してこなかった米クアルコムも情報公開に転じ、同社のスナップドラゴンSoCに搭載されているヘキサゴンDSPについて、詳細を発表した。
 HCは3日構成で、初日はチュートリアル(講習会)、残り2日が発表である。午前のチュートリアルでは、CPUとGPUの混在環境での効率的プログラミング方式の確立を目指す「HSA財団」より、開発中の方式の解説があった。また、同日午後にはフラッシュメモリに関する講習がなされた。
 今回のHCは、昨年より参加者が増えて560名に達している。

■マイクロソフトがXbox Oneに搭載したSoCの詳細を発表
 今回のHCで最も注目された発表は、マイクロソフトの次世代ゲーム機Xbox Oneが搭載するSoC(システムLSI)の詳細であろう。同社のジョン・セル氏が発表した。
 Xbox Oneには、AMDのプロセッサが搭載されることは明かされていたが、詳細は26日朝の発表まで持ち越されていた。
 今回判明したのはXbox Oneは、AMDのジャガー・コア(低消費電力指向のコア)を8コア搭載したSoCを搭載することだ。従来も口頭もしくはリーク的に語られては来たが、マイクロソフトが詳細な構造を示したのは初めてだ。
 ジャガー・コアは、それ以前のボブキャット・コアを改良したもので、命令効率は15%以上改善されている。ただし、今回の発表では駆動周波数や消費電力は明らかにされていない。
 ジャガー・コアでは、4コアを集めて1ユニットとしている。Xbox Oneでは8コアあることから、2ユニット構成となる。メモリは、RAMを8GB搭載する他、フラッシュメモリも8GB搭載する。
 AV関連ユニットの処理能力は高い。このSoCには、MPEG-4 AVC/H.264(以下、AVC/H.264)のエンコーダとデコーダがハードウェアで内蔵されている。もはや、AVC/H.264のハードウェアが機能ユニットとして使えるのである。搭載されたエンコーダは、同時に複数のストリームを扱えるとされており、複数箇所への伝送、複数レートへの対応などがされている模様だ。デコーダは、複数フォーマットに対応する。MPEG-2などへの対応がなされるとみられる。またAVC/H.264のMVCへの対応することから、立体視のデコードがサポートされているとみられる。
 オーディオユニットは、2つのベクトルDSP(128ビット)、スカラーDSP、そして制御用DSPを備える。加えて、単純な符号化・復号処理用にオーディオ用ハードウェアユニットを持つ。ベクトルDSPの演算能力は、総合すると15.4GFLOPSに達するという。これはオーディオ用には非常に高い値で、多チャンネル向けの空間処理(残響、定位処理)などに活用されるとみられる。
 Xbox One用SoCは、この他に「サウス・ブリッジ」と称される入出力用のSoCもある。こちらは、HDMI入力にも対応しており、外部から取り込んだ映像を加工するアプリケーションに備えたものと考えられる。なお、HDMI出力は、メインSoCにある。
 メインSoCはトランジスタ数にして約50億個、台湾TSMCの28ナノメートルHP(高性能)プロセスで製造される。HPプロセスは、駆動周波数は高められるが、消費電力も大きくなる。ジャガー・コアの採用は、同じ性能で駆動周波数を下げることができるためと見られる。

■Kinect大幅改良
 続いて、同社のパトリック・オコナー氏が新しいKinect(キネクト)について発表した。Kinectとは、Xbox360用の3次元動きセンサ(同時映像取得可)で、15,000円程度の価格ながらリアルタイムのZ(デプス:深度)情報が取得できると話題になった。
 Xbox360用のデバイスは、イスラエルのPrime Sense(プライムセンス、http://www.primesense.com)社の3次元計測用SoCを搭載している。これは、赤外線を発し、それが対象に当たると不可視の輝点を作り、この場所を2つのカメラから計測することで3次元情報を取り出すものである。輝点は、多数生成される。同社のSoCは3次元計測の世界ではよく使われており、Kinect以前からある同様な製品にも使われている。マイクロソフトは、Prime SenseのSoCが出した結果を、人工知能技術を応用した独自開発のフィルターで整え、高品質のデータを生成している。
 Xbox One用の新型Kinectでは、3次元計測に自社開発のSoCを採用した。今回は、2.5cm以下の物体を検知し、距離0.8mから4.2mの範囲で精度が確保できるようになっている。視野角は70度と、初代よりも大幅に拡がっている。
 測距には、TOF方式(光線飛翔時間計測方式)が採用された。これまで、TOF方式の3次元センサーは廉価なものでも5万円近くの値段が付いていたが、ゲーム機用の新型は初代同程度の価格となるとみられる。
 データ出力もデモされた。ノイズ除去加工を行ったかは不明だが、ノイズが見えない良質なデータが30fpsで出力されていた。センサー遅れを短縮するのが鍵であったといい、20ミリ秒以下を達成している。なお、このSoCも設計はマイクロソフトで製造はTSMCであるという。

Xbox OneのSoC構造を発表する米Microsoftのジョン・セル氏

Xbox OneのSoC構造を発表する米Microsoftのジョン・セル氏

Microsoftのパトリック・オコナー氏は新型Kinectが用いるセンシング技術を発表した

Microsoftのパトリック・オコナー氏は新型Kinectが用いるセンシング技術を発表した

#interbee2019

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