【IBC2013】4Kへ向けて走り出した欧州放送事業者 地上波・衛星での4K放送実験多数 各社から4K HEVC符号化装置

2013.10.9 UP

 
DVB-T2による4K伝送(25.24Mbps)とT2-Lite伝送(1.02Mbps)を8MHz帯域内で行った

DVB-T2による4K伝送(25.24Mbps)とT2-Lite伝送(1.02Mbps)を8MHz帯域内で行った

独フラウンフォーファー研究所HHI部門は、HD用のHEVCソフトウェアエンコーダを出展

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英クォンテルは、8K対応のカラーグレーディング・ソフトウェア「パブロ・リオ」をデモ

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 欧州最大の放送機器展示会「IBC2013」(主催=英IBC)が9月12日から17日までオランダ・アムステルダムの展示会場RAIにて開催された。今年は、会場は「4K」の話題で埋め尽くされ、「4Kをやるのか否か」ではなく「4Kに適したビットの深さはどこか」が大きな話題となっていた。すでにHEVCによる実験を行った各機関から報告が相次いだ。加えてイタリア放送協会(RAI)からは、HEVCの詳細な画質報告がなされるなど、4Kに向けて一気に欧州放送業界が走り出していることが見て取れた。
(映像新聞 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)

■過去最高の参加者数52,974人を記録 ホールは14に拡大
 欧州最大の放送機器展示会IBCは、今年もオランダ・アムステルダムの展示施設RAIで開催された。9月12日よりコンファレンスが始まり、展示会は翌13日より開催された。いずれのイベントも、17日に終了している。会期中の全参加者数は5万2974名で過去最高を記録した。昨年より2037名(約4%)増加している。

■周波数再編へ向け議論 「地上波放送停止」宣言の民放も
 今年は、コンファレンス関連では4KやHEVCといった次世代技術を睨んだものが多かったが、一方で地上波のサバイバルに関する問題も話題に上っていた。昨年のWRC(国際無線通信会議)では、第一地域(欧州、中東、アフリカ、ロシア)において700MHz帯が放送・移動通信共用帯域に指定されることが明確となった(決定は015年のWRC)。
 このため、再度の周波数再編等が見込まれている。ドイツの民放大手RTLは地上波放送停止を宣言し、既にバイエルン地方(ミュンヘン地域)での送信を打ち切っている。WRC決定の結果予想される再編に巻き込まれることを嫌ったためと言われている。この状況下で地上波放送はいかなる戦略を採るべきか、といった議論もなされていた。

■4K、HEVCの準備万端
 展示では、4K関連がカメラ、HEVC符号化復号装置、記録再生装置、カラーグレーディング機材などで見られた。HEVCは、ハードウェア、ソフトウェアに加えて、IPコア(半導体化用設計図)も出展されており、各社とも準備が揃っていることを示していた。
 今年は、展示会場が常設の12に加えて、臨時設置のテント型が2つあり、合計14のホールとなった。テント型のホールでは「コネクテッド」が話題となっており、OTT関連装置が見られた。

■DVB陣営 「地上波による4K放送」をデモ
 NAB Show 2013では、制作側から4K収録への意欲が示された。IBC2013では、機材側から準備状況が示された形だ。
 DVB陣営をまとめるDVBプロジェクトは、4K映像の地上波伝送を見せていた。DVB-T2方式による4Kと、同じチャンネルで伝送するDVB-T2Lite方式によるモバイル向け放送をデモした。
 帯域幅は8MHzで、会場南数100mの場所にある放送塔より送信されている。DVB-T2側のデータレートは25.24Mbps、T2-Lite側は1.02Mbpsである。4K映像は、事前にHEVCにてエンコードされた信号による。デコードは、米ブロードコム社の4KデコーダLSIのリファレンスデザイン(参照設計:機器メーカー向けの設計例)によりソニーの55型4Kテレビに出画していた。なお、T2-Liteの受信機(復調器)はドングル型で、ソニーが提供していた。

■ヒスパサット 20Mbps以下で4K HEVC衛星伝送
 スペインの衛星通信会社ヒスパサットは、20Mbps以下にHEVCにてエンコードした4K映像を衛星伝送した。同社は「20Mbps以下としては、世界初の4K HEVC伝送」としている。今回は、輝度・色深度は8ビットで25Pでエンコードした。本件に関して講演した同社のジョルジ・ロドリゲス・ロペス氏は「ヒスパサットは、本年3月以来4K送用の無料放送向け伝送サービスを行っている。HEVCとMPEG-4 AVC/H.264を並行して流している」と明かした。
 会場で流された20Mbps以下のHEVC映像は、この商用サービスと同一チャネルで流されている。なお、同氏によれば「画質的には10ビット、50Pが望ましく、HDMI2.0の普及が待たれる」とのことだった。

■各社から4K対応HEVC符号化装置
 HEVC用のエンコーダ、デコーダも数多く見られた。仏アレグロ・ディジタル・ビデオ・テクノロジは、4K対応のVoD向けHEVCエンコーダ「AL3200」を出展した。この装置は、ファイルベースの変換用である。同社は、他にHEVCデコーダ(4K@60P対応)用IP、HEVC用テストストリームなども出展し、HEVCへの対応準備が整っていることを示していた。
今年のNAB ShowにもFPGAによるHEVCエンコーダを出展した米バンガード・ビデオは、今回もHEVC関連技術を出展している。4K@60P対応のソフトウェアデコーダ、HD@30P対応のソフトウェアエンコーダ、米ザイリンクスのFPGAによるハード化を行ったエンコーダなどを出展した。
 4Kエンコーダ・デコーダは、インドのイッティアム・システムズも活発に開発している。同社は、米クアルコム社のスナップドラゴンSoC向けにHEVCデコーダを供給したことで知られている。ミーティングスペースの前に掲げたパネルで、4K用HEVCエンコーダ、デコーダ用のソフトウェアが供給可能である事をうたっていた。同社はエンコードはHD、デコードは4Kがリアルタイムで可能としている。
独フラウンフォーファー研究所HHI部門も、HEVC用ソフトウェアエンコーダ、デコーダを出展した。エンコーダはHD@30P、デコーダは4K@60Pに対応する。また、FPGAによるHEVC用エンコーダは、駆動周波数は150MHz以下でありながらHD@30Pのエンコードを行える。同研究所は、いずれもメイン10プロファイルに対応していた。
 カラーグレーディングツールでは、英クォンテルがソフトウェアベースの「パブロ・リオ」が4Kおよび8Kに対応することを明らかにしていた。ストレスなく作業を行ないその能力を示していた。
 コンバータでは、米AJAが「4K2HD」を出展した。3G-SDI(最大4入力)からHDMI 1.4信号へ変換する。撮影現場で、カメラモニタにHD機材を利用する際への使用を想定している。

■「メイン10プロファイルが高画質」
 講演会では、既にHEVCにより4Kをテストした機関からの報告が相次いだ。前出のヒスパサットの他、イタリアRAIからは「メイン10プロファイルの方が同一レートでも高画質」との報告もなされた。HEVCの規格化にも参加した米NGCODECのアルベルト・デュエナスCTOも「バンディング(色境界が見える現象)を避けるためにメイン10プロファイルの利用が望ましい」とし、10ビット化を後押しした。

DVB-T2による4K伝送(25.24Mbps)とT2-Lite伝送(1.02Mbps)を8MHz帯域内で行った

DVB-T2による4K伝送(25.24Mbps)とT2-Lite伝送(1.02Mbps)を8MHz帯域内で行った

独フラウンフォーファー研究所HHI部門は、HD用のHEVCソフトウェアエンコーダを出展

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英クォンテルは、8K対応のカラーグレーディング・ソフトウェア「パブロ・リオ」をデモ

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#interbee2019

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