InterBEE REVIEW2016
70/71

10411月18日(金) 13:00-14:30「VRで映像は進化するのか?視聴から“体験”へ 先駆者が語るVR」 1日12-13件ものVR関連情報を発信するウェブメディア 「Mogura VR」の編集長の久保田 瞬氏がモデレータとして進行を務め、パネリストには、 全天球映像作家 「渡邊課」の渡邊 徹氏、(株)eje 代表取締役の三代 千晶氏が登壇した。 渡邊氏は当初、全天球をつかったPR映像の制作で、VRを用いたプレゼンをしたことがVR制作を始めるきっかけと説明。現在では、全天球の映像企画、撮影、編集を自ら手掛け、YouTubeでも作品を載せているという。デートスタイルのコンテンツや、水中全天球映像。音楽ものライブの制作、MVの制作・監督など実績を重ねている。 VR映像の特徴について渡邊氏は、「体験」に特化している点だと指摘。「最終的にVR作品でどういう体験をしてもらいたいかというイメージから逆算して、物語や企画、VR空間のデザインをしていく」と話す。 三代氏はフォトグラファーとして広告関係の仕事をする中で、QuickTime VRに出会い、業務に取り込んでいったことがVRとの出会いという。その後、2004年にejeを設立し、クリエイティブコンテンツの企画・制作などを手掛ける中で、VRを企業に提案し、数多くの実績を重ねている。大阪市の景観や水中撮影によるVRなど、多様なジャンルのVR実写コンテンツを手掛ける中で、「日本が世界に誇れる無形・有形の文化財をVRで伝えたい」という思いが芽生えてきたという。 ejeでは、国内初のVRポータル、VR CRUISEをリリースしている。ジャンルを絞らず、ニュース、スポーツ、アーチストライブなど幅広い。またVRを手軽に体験できる場として、ロケーションVRというVR体験スペースの設置をネットカフェやカラオケ、商業施設などに働きかけている。さらに、VR 4 goodと呼ぶ世界的なムーブメントに触れ、ejeもまた、体の不自由な子供に動物園の動物とのふれあいを体験してもらうなど、VRを福祉に用いる運動にも参加していると説明した。 VR とこれまでのメディアとの違いについて、久保田氏が問いかけると、渡邊氏は次のように話した。 「映画や写真は、誰かの視点を追体験している形だが、VRは実際に視聴する人自身がまさに体験してる。映像自体は、その人の頭の動きに依存しているため、誰かの視点を見ているというものと大きく異なる」という。また、複数の参加者がそれぞれの視点で同じ場を共有できるという点もVRの特徴だと話す。しかし、「演劇に近い緩急がないと、おいてきぼりの映像になる」と演出の重要性についても指摘する。「参加者が蚊帳の外で見ているだけという印象に陥りがち。物語の中で感情的なレスポンシブ、リアクションをどうつくってあげるかが重要になる」と話した。 三代氏は「たとえ仮想でも、自分が誰かがはっきりしているという設定が大事。 デートはわかりやすい。イケメンが来てストーリーが展開していく。ささやかれて、ぞくっとするとか、見つめられて照れるといった距離感を利用した演出を物語の中でうまく使うことで、参加者の感情を高めていく」という。 カメラの位置について、渡邊氏は「見る側の姿勢や高さに合わせることも必要。立ってみるのか、座ってみるかで映像の作り方も変わってくる。視点の高さを想定しておかないと、体験が異質なものになる」と説明。三代氏は「センターに置くと、情景や距離が等倍になり面白く見えないので、どちらかに寄せている」と話す。 今後の展開として渡邊氏は、VR映像表現に加えて、体に振動や傾きなどを感じさせる体験を加えるコンテンツづくりを進めているという。振動や傾きを感じる椅子「MX4D」によって、体験が3倍にも4倍にもかわってくるという。 三代氏は「やりたいことはいっぱいある」と前置きしながら、「11月23日にガンダムのVRを公開した。そのときに、ガンダム専門のSE会社の協力を得たが、すばらしい音の作り方をしていた。音をもっと効果的に用いるコンテンツをつくっていきたい」と述べた。

元のページ  ../index.html#70

このブックを見る