InterBEE REVIEW2016
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 セッション前半は、ジョリーグッド代表取締役・CEOの上路 健介氏が、同社のVRプラットフォームである「GuruVR」を紹介し、後半で「ローカル局発のVRビジネスの今」と題して、上路氏がモデレータとなり、GuruVRを導入してVRコンテンツを開発した3つの地方局の担当者が登壇した。■地域の放送局によるVRアプリ企画が続々登場 Guru VRは、もとIBC岩手放送で番組制作や企画を担当してきた上路 健介氏が 大手広告代理店で番組の企画開発を担当する中でVRと出会い、 自ら100本以上に及ぶVR映像を自ら制作する中で、「Guru VR」を開発した。大きな特徴は、カメラを特殊なアームで支えることで、アナウンサーなど話者の肩に設置して撮影ができるため、カメラマンなどが見切れることがなく、また、アナウンサーも両手が自由に使える点にある。また、画面中に表示されたメニューを、視線で操作できる独自のポインターで選ぶことができるため、VRビューアー以外のデバイスを用いないでEコマースなどを組み込んだり、中身の濃いコンテンツを構築できる点にある。 ジョリーグッドではまた、配信サーバーやプログラミングせずにコンテンツのオーサリングができるツールも提供しており、放送局が番組制作のノウハウを用いて制作しやすい環境を整えている。上路氏自身、もともと放送局に所属していた関係で、地方局の営業体制などを熟知しており、コンテンツの営業展開等を意識したサポートを実施している。最近では、ブートキャンプとして、短期間でVRコンテンツ制作を習得する教育プログラムも提供しているという。■VRを新たな営業ツールに 後半のセッションに登壇したのは、東海テレビ放送 営業局営業戦略部 担当部長の木ノ原 良太氏、テレビ西日本 技術局 映像センター ITコンテンツ部長の尾野上 敦 氏、北海道放送メディア事業局 デジタルメディア部長 小川 哲司氏の3人。 GuruVRを活用したアプリ「HBC VR」を公開している北海道放送の小川氏は、VRについて「新しいニーズがあるはずという思いもあった。また、ローカル性は武器になるのではないかと思った」と話す。制作した感想として「自由な視点が楽しい」、「高さを実感する」などの利点とともに、360度カメラだと、遠景が通常のカメラ以上に遠く感じる、画像スティッチのためにやってはいけない動きなどを教えておかないと破綻が起きるなどの注意点も指摘した。「今は、とにかく経験値を上げることが第一。TV局がやっていることと360度動画は食い合わない。それぞれが補間する技術、メディアになってくれれば」と期待をかける。 テレビ西日本の尾野上氏は、放送局で送信、情報システム、データ放送、ホームページを担当する中、マル研にも参加し、放送とネットの連携でなにか新しいことができないかと考え始めたのがきっかけと話す。「自分たちでブームをつくっていく」という思いから、「VR九州」を発表した。現在もコンテンツ開発を進めるとともに、九州における協力者を募っている。「当面の目標は、パートナー企業を10 社、コンテンツ数を100にしたい。1年後ぐらいには達成したい」(尾野上氏)。また「私自身の夢」とことわりながら、「電波をやっているので、VRの放送がしたい。誰もが特等席でエンターテインメントを楽しめる。生中継なら、会場との一体感もある。コンサート、スポーツ中継など、みんなでVRを見られる環境ができるのでは」と述べた。 東海テレビ放送の木ノ原氏は、最初にGuruVRでVR映像を視聴して「単純におもしろいと思った。ローカル局にとって、充分とりくんでいける分野だと思った」と話す。8月に愛知県の美浜町でAKBグループのSKE48と屋外コンサートを開催。そのコンサートを番組化するときに、新しい取り組みとして、ライブをVRで配信した。 木ノ原氏は「VR映像はTVにとって親和性が高い。テレビ局が使える新たなツールの一つと捉えている。スポンサーに対して新たな営業ツールとしてVRを作って東海テレビのアプリから配信するという提案ができる。配信をしている編成開発からすれば、新たな課金ビジネスがつくれる。いろいろな可能性があると期待している」と述べた。10011月17日(木) 13:00-14:30「テレビマンが創るハイクオリティVRとメディアの未来~本格始動したローカル局発VRビジネスの今~」

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