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2011.5.31

【コラム】映画制作における最新ワークフロー iPad2とデジタル一眼カメラを活用

映画「Naively Honest」 撮影合間のスチル
映画「Naively Honest」 撮影合間のスチル
iPAD2 で台本と香盤表を確認
iPAD2 で台本と香盤表を確認
iPAD2 で撮影した画像を基にキャストに説明
iPAD2 で撮影した画像を基にキャストに説明
絵コンテ表示例(ロケハン時に撮影した静止画を埋め込んでいる)
絵コンテ表示例(ロケハン時に撮影した静止画を埋め込んでいる)
デジタル一眼カメラ + DDR + LED照明
デジタル一眼カメラ + DDR + LED照明

 長年にわたり、StudioPONの個人経営者として映像制作のワークフローのソリューションを提供してきた。さきごろ、撮影と録音を担当した自主製作映画「Naively Honest」(金子嵩明監督、現在編集作業中・公開時期は未定)では、撮影現場での情報共有にiPad2を導入。脚本のチェックや絵コンテの共有などにiPadを用いることで、質の高い情報共有と制作効率の向上を実現することができた。(Studio PON代表 宮島好明)

■経費節約、エコを意識した制作工程
 映画「Naively Honest」では、経費の節約、節電、エコを追求した映画制作を試みた。撮影にはデジタル一眼カメラ「Canon EOS Kiss X4」を採用し、 照明には160個のLEDを搭載したバッテリー駆動の携帯型照明、録音はオフマイクによりDDR経由で記録。携帯電話と PHSのバッテリー充電には再生エネルギーである太陽光発電を採用した。

 撮影映像の記録も大幅に小型・軽量・省スペース化を実現している。データ量はシーン数、カット数、 NG数、台詞の長さ等により増減するが、今回は撮影期間9日間で68シーンを撮影し、データ容量は約200GBであった。デジタル一眼カメラ側からは QuickTime(.mov 1920 x 1080 24p, 8bit YUV4:2:0)として SDカード(SDHC対応、32GB、class10)に記録。編集が終わらないと正確な上映時間は分からないが、最終的に上映時間は60 分を越えるだろう。

 現場での確認用、データの取り込み用として Apple MacBookPro17インチと外付けポータブルディスク 500GBを採用。二次ストレージとして 2TBのハードディスク2個を用いた。MacBookPro17インチと SATAディスクとの接続には eSATAを採用した。

 こうした試みの中でも、iPad2による制作への応用はまったく初のことであった。iPad2が日本で発売されたのは4月28日で、クランクインが 4月30日であったため、日本国内での映画撮影における iPad2応用としては前例がなく、独自に応用方法を確立することになった。

■現場で用いる紙を大幅に削減
 脚本、香盤表、各種台本、絵コンテなど、映像制作における情報共有の手段には、紙にプリントしたものが多用される。しかも台本は、初稿で終わらず、数回更新されるため、一人の俳優、スタッフ用に何冊も作られるのが普通だ。香盤表も天候、キャストのスケジュール、ロケーションにより、たえず変化する。
 今回は、脚本、香盤表、絵コンテ等を閲覧できるようにした。大きなメリットはまず、紙代やインク代の削減によるコスト低減と環境的にも資源を使わないエコな制作ができたことだ。

 次に、データと連動して地図を参照できる機能は、ロケハンや本番のロケ撮影をする際にとても有用だった。常に最新の情報を最新の状態で閲覧可能なために、情報の行き違いがなく、ロケ地の変更などについても、常に全スタッフがリアルタイムに共有できた。

 iPad2を映画制作に採用したもう一つのメリットは、現場で画像を共有できる点だ。iPad2から新たに内蔵されたカメラを用いれば、本番撮影の画角をその場で決め、スタッフとキャストの全員が同じ映像を見て確認することができる。今回の撮影で使用したデジタル一眼カメラのディスプレイは 3インチだったので確認・説明用としては小さかったこともあり、ディスプレイの大きさが9.7インチのiPad2が大いに役だった。

 実は、当初からiPad2を用いることを想定していなかったため、事前の香盤表、ロケ撮影の日程を変更できず、日程の短縮にはつながらなかった。しかし、情報共有という点で作業の効率を高めることができた。iPad2を使うことで、無駄な動きを極力なくすことができ、制作スピードも大幅に向上することが分かった。制作スタッフ数は4人、用意したiPad2は1台。現場の確認用としては、1台のiPadで十分だったが、今後は台本のチェックなど、すべての俳優が現場で持っても良いかもしれない。

■デジタル一眼カメラによる撮影・制作ワークフロー
 StudioPONでは、いち早くデジタル一眼カメラによるワークフローを構築してきた。すでに2009年のInterBEEで、当時発売されたばかりの CanonEOS7Dと CineFormNeo3Dを用いたデジタル一眼カメラによる立体映像コンテンツ制作のワークフローを日本国内で初めて展示している。その後、2010年6月には、キャノンマーケティングジャパン主催のプライベートショー「プロフェッショナルムービー体感会」でも展示をした。

 デジタル一眼カメラによるワークフローの鍵となるのは、高品位な映像コーデックCineFormだ。CineFormを用いることで、データ量が比較的軽く画質劣化がない中間ファイルを作成し、この中間ファイルを用いて編集を行う。CineFormは、海外でも、映画「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年公開、撮影機材: SI-2K)で用いられている。国内では映画「築城せよ!」(2009年公開、撮影機材: RED ONE)で採用されているなど、劇場映画で使用されている実績を持つ。当社でも、原宿・表参道のイベント(「とことん青森」 2010年 1月)、東京マラソンのプレイベント(「東京マラソン EXPO」2010年 2月)、某グラビアアイドルの撮影・編集・オーサリングで用いている。

 こうした現場での数多くの制作体験を経て、デジタル一眼カメラと映像コーデックCineFormによるワークフローにより、機材の大幅な小型・軽量化を実現している。デジタル一眼カメラは、動画撮影の合間を縫って出演者やスタッフのスチール撮影にも威力を発揮する。スチルと映像の機材が1台ですむので軽量、かつロケの際の荷物も軽減した。これに加えて、新たにiPad2を用いた情報共有を組み込むことで、より効率的な制作ワークフローを構築できるだろう。


■課題

[バッテリー ]
 iPad2のバッテリー駆動時間は問題なかったが、デジタル一眼カメラと DDRは予備バッテリーが必須であった。特にデジタル一眼カメラには大容量バッテリーが存在しないため、充電ができない撮影環境の場合、予備バッテリーも複数個用意しなければならない。

[充電時間]
 エコにこだわり、使い捨て電池ではなく充電電池(照明用単三電池 6本、 DDR用 2本)を採用したため、撮影後に電池の充電に相応の時間を要した。

[撮影他]
 デジタル一眼カメラの小さなディスプレイ上で撮影した素材を再生するとノイズが隠れたり、明るさが撮影したイメージと異なったりする。また、iPad2 のディスプレイに慣れてしまうとEOS kiss X4のディスプレイでは迫力に欠ける。やはり、HDMI経由で、より大きなサイズのディスプレイ上での確認が必要だ。レンズフードでもレンズフレアを消すことは可能だったが、マットボックスの方がズーム時の映り込みがないので安心して使える。
 NAB Show 2011の展示会場で見かけたようなデジタル一眼カメラを肩乗せ用に変換するサポートシステムやステディカムも採用したい。

▼機材
カメラ:Canon EOS Kiss X4
レンズ: Canon EFS18-55mm F3.55.6 IS
フィルター:UV他
レンズフード: Canon ET60
録音:Zoom H4
電子書籍閲覧・演出: Apple iPad2 16GB 3G+Wifiモデル
コンピューター:Apple MacBookPro17インチ
インターフェース:Express34、eSATA変換カード
ハードディスク:Hitachi DESKSTAR 2TB x 2台
ポータブルディスク:Buffalo 500GB USB I/F

▼作品情報
作品名:「Naively Honest」
監督・脚本:金子嵩明
演出・編集:猪本紳
撮影・録音:宮島好明
上映・配給: 未定(募集中)


【宮島好明氏 略歴】 Lockheed子会社を経てElectric Image, Inc.に入社。独立後、form.Z + Electric Image、Animation System + Media 100 + AfterEffects というソリューションを構築。Electric Image Animation System, CoSA AfterEffects, Data Translation Media100, auto.des.sys form.Z, Cine Form Neoシリーズ, Onyx Computing TREEシリーズ, BorisFX 他の総販売代理店やリセラーやコンサルタントとなり日本市場にて展開。企画、デザインも担当。

問い合わせ先: Studio PON URL: http://www.studio-pon.com/




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