InterBEE REVIEW2011 (JP)
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考え、自分でつくったものに利用価値を持たせ、それをクライアントがほしい、だからビジネスが成立する、という構造にしていかないといけない。結城さんのようなデザインマネージャーや、デザインコーディネーターがほんとうに今、必要だと思う。そういう存在によって、クリエイターの意識が変わる」 加藤:「クリエイターの意識改革とともに、周辺の多くの人が道筋、環境を整える必要がある。NHK内でフリーのクリエイターが仕事ができる環境を提供しているのと同じような状況を、たとえば日本という国の中につくれないのか。我々としても考えていきたいが、日本の文化であり、重要なコンテンツ産業の育成を担う、国や行政の人たちにも考えてもらいたいと思う」 3人はすでに第一線でもの作りを手掛けながら、すでに次世代をにらんだ次のアクションを進めている。3人の熱い語り口には、新しい世界を切り開くパワーを感じさせるものがあった。■具体的にみなさんが進めているアクションについて。 結城:「日本ならではのコンテンツをつくり、やはり海外に発信できるものを手掛けたい。クリエイターというよりプロデュースの立場からすると、アジアにハリウッドと対抗する市場、勢力をつくるために、日本から海外へ展開するための道筋、突破口を開いていきたい。私が得意とする海外の人脈を活用することで、アジアのクリエイターとの連携を深め、共同制作を数多く手掛け、アジア市場の活性化に貢献していきたいと思う」 結城:「また、以前、東京工科大学で教鞭をとったこともあり、現在は東京電機大学の研究員をしている。自分自身今回チャンスをいただき素晴らしい経験をさせていただいた。是非若い人にこの経験を共有する機会をより持てればと思っている。インターネットによる放送局を東京工科大学の学生にやらせたことで、調整・交渉の大変さを学ばせた。CEATEC JAPANといった一般の社会の現場に引っ張り出しリアルに実際の社会人とのコミュニケーションを与える経験を積ませることで、それがその後学生の就職に役だっている。デザインとは異なるが、情報発信のベースを担う人材も重要だ」 菱川:「具体的なアクションとして、武蔵野美術大学で教鞭をとっている。教育だと思っている。業界に入る前に、ある種の「思想」を伝えなければ。現場にいて感じている危機感をいち早く、伝えたいと思っている。彼らが気がつくときが30 代。現場に入る前に伝えて、ある種の美学や美意識をできるだけ、大切にするような意識を持ってもらって、クリエイティブの現場に入ってもらいたい。意味もなく迎合するな、とか、そうじゃないと、存在価値がないということを伝えておくべきだと思う」 菱川:「大学で、現場で起きていることをできるだけリアルタイムで伝えることが重要。ある意味で、二足のわらじを履いてやる教育者が必要だ。結城さんがブルドーザーで開いてくれた道ができたときに、ちゃんとその道を進んでいける粒ぞろいの人をそろえておきたい」 加藤:「私は、2012年から大河ドラマ「八重の桜」の演出を担当する。福島を舞台にしている。どれだけ多くの人に参加してもらえるか、ということがこのドラマの意義と考えている。大河ドラマという確立したフォーマットを社会的な資産として用いて、多くの人の力を借りていく。それにより東北の歴史をもう一回見直そうという試みだ。ドラマの枠組みを超えてなにができるのかを考えている。同時に、枠組みを超えるためにはブレない軸足が必要だ。私を含め多くのドラマディレクターはOJTで仕事を覚えてきた。演出技術という、「ゆるがせないドラマの作り方」を多くの人に身につけてほしい。「坂の上の雲」で得たノウハウも共有すべき財産であり、共有することでコンテンツ産業の次の一歩があると思っている」世界市場をにらんだ人材育成、コンテンツ制作22

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