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2009.11.17

【映像制作の現場から】日本映画撮影監督協会(JSC)の柴主高秀氏が語る 『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』制作エピソード

映画『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』
撮影風景
“当時のリアルな暗さの再現”を目指した

 第33回モントリオール世界映画祭コンペティション部門にて、最優秀監督賞を受賞した映画『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』が全国で公開中だ。同作は太宰治の文学作品『ヴィヨンの妻』を中心に、他の太宰作品からも要素を借りて太宰世界全体を描いた作品である。撮影監督を務めた柴主高秀氏が、同作の制作について語った。

(メイン写真(C)2009フジテレビジョン ババドウ 新潮社 日本映画衛星放送 )


<<故市川監督への想いを込めたタイトル最終決定>>

 根岸吉太郎監督から柴主氏のもとへ映画『ヴィヨンの妻』撮影のオファーがあったのは、2008年夏のことだった。「その時期、私には別の仕事が入っていて、同作の撮影セット制作に専念できない状態だったにもかかわらず、撮影を任せてくれた監督に感謝しています。9月になって制作に参加した時には、東宝第8スタジオの巨大なセットはほぼ完成していました」。

 同時期に故市川準監督も同原作の映画『ヴィヨンの妻』の製作準備をしていた。根岸監督は同じタイトルを避け、『桜桃とタンポポ』というタイトルでクランクインした。

 「しかし市川監督は残念ながら突然お亡くなりになりました。根岸監督は誰よりも市川監督の映画『ヴィヨンの妻』完成を楽しみにしていました。市川監督に敬意を表するとともに制作を見守ってほしいという想いを込め、『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』が最終決定タイトルとなったのです」。主演は今回映画初主演だという松たか子。夫の大谷譲治役は浅野忠信に決まり、制作が始まった。


<<セットの光源で、当時のリアルな暗さを再現する>>

 今作における柴主氏のテーマは“当時のリアルな暗さの再現”だった。フィルムは使い慣れたEK5229を使用し、データ収得の時間短縮を図った。
 「時代物のセット撮影なので、光源はすべてライトです。デイシーンの光源はHMI(デイライト)でお願いしました。朝~午前のシーンは直射で光源が硬く見えるように、午後~夕のシーンは直射以外の天空(フレアー)の部分が主となったバランスで処理しました。ナイトシーンは、時代設定を反映して裸電球が主光源です。シリカ球とクリア球の差をテスト撮影し、クリア球を使用しました」。

 セット内は狭くアングルも限られている。今回の鬼門となったのは柱だったと柴主氏は話す。
 「日本家屋には、こんなに柱があったのかと思うほど、撮りたいポジションには柱が立っていました。撮影の必要に応じてセットを解体しては元に戻し、美術部の皆さんは大変なご苦労だったと思います」。
 セットはリアリティを追求して畳を古く加工し、床の軋みまで実現させていた。重い機材は諦め、上下フォローが必要な場合はミニジブを使用した。


<<根岸監督のことば。古き良きことと、新しき良きこと>>

 柴主氏は同作の制作を振り返ってこう話す。
 「クランクイン前のスタッフ会議で、根岸監督が“この映画はかつて撮影所で作られていたのと同様のセット映画。先人の偉業に敬意を払い、さらに新しい表現で映像を創りたい”とおっしゃっていました。私もこの映画との出会いで、古き良きことを再確認し新しき良きことの在り方を学んだように思います」。




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